第138話●遅く帰宅した夜には
そんな感じで雑談をしていたらあっという間に17時を回っていた。この仲間と話をしていると本当に楽しくてあっという間に時間が過ぎていく。
「あっ、太田さんからRINEだ。搬入終わったみたい。今日は時間つぶしに付き合ってくれてありがとう。」
「いえいえ、大学では出来ない話が出来て楽しかった。へべすの配信はまだ続いているみたいだから私はここに残るね。二人はどうする?」
「私も待ってようかな。今日は曲作りしないし。」
「私も残るね。明貴子と一緒に帰るから。」
「じゃあ、そうしよう。未亜によろしくね。」
「うん、わかった。じゃあ、一足先に。」
三人に玄関まで見送られ、同じ階のすぐそばにある自宅へ入る。こんなに近いのは本当に楽だし、何より安心できて、ありがたいことだよなあ……。
自宅に戻ると家具はちゃんとすべて配置が終わっていた。デザインが統一されたこともあって、なんかすごい高級感あふれる部屋になった……ような気がする。
一通り全部搬入されていて、組み立ても問題ないことを確認したので、太田さんにRINEで確認連絡を済ませておく。後日事務所へ行ったときに書面にサインをしたら完了だ。
今日はもう執筆する感じでもなかったので、まだ配信しているのかなあ、と何の気なしに日向夏へべすチャンネルを開いたらオフコラボ記念配信に彩春さんが声だけで出演していた。RINEで部屋に残っている二人に確認すると、俺が部屋を出たあと、みんなで配信を付けて聞き始めて、しばらくしたところで「いろはも実は今日来ている」という話になって、急遽出演、という流れらしい。結局、二人は19時過ぎまで配信をしていた。こういうのを見るとさっきまで話していた人たちは何万人も配信に集めちゃうようなすごい芸能人だって実感できて、なんかすごい不思議な感じがするけど、みんな普段はちゃんと地に足の付いた生活をしているから余計にそう感じるんだろうなあ。
そして、我が家の方は、晩ご飯をどうしようかと思っているのだけど未亜からは何の連絡もないまま19時を過ぎている。ゴッゴルカレンダーを見ると今日はバラエティ番組の「揺れる!いわし屋敷!」でひな壇ゲストとある。マシンガントークが有名な淡路亭いわしさんがMCだからさては収録が押しているんだろう。レトルトのたらこパスタソースがあるから食べてないようであれば、パスタをレンジでチンしてレトルトを温めるかな。すぐ作れるように準備だけしておこう。
俺の事件の時もそうだったけど、やっぱり二人でちゃんと予定を共有するのって大事だよね。今となってあのときの心境を思い起こすと最初にこれを提案したときは、正直彼氏だからというよりもマネージャみたいな感覚だったんだよな……。もちろんいまは大切な人だからちゃんと予定を把握しておきたいという気持ちになっている。
未亜からは結局22時過ぎにいま終わったから帰るというRINEが入った。やっぱり収録が相当押して、しかも晩御飯は食べていないとのこと。そして、23時少し前に帰ってくるととても申し訳なさそうな顔をしている。
「連絡が全然出来なくてごめんなさい……。」
「そういう仕事だし、それは仕方ないよ。番組MCから収録が押しているんだろうなって、想像が付いたしね。」
「うん、すごかった……。1時間番組の2本撮りなのに6時間とか、初めてだよ……。しかもいわしさんが一人でほとんどしゃべりっぱなし……。」
「噂は本当なんだね!?とりあえず、レトルトのパスタソースを温めるからそれで我慢してね。」
「そんな我慢だなんて……。ありがとう!」
「俺もまだだから一緒に食べよう。」
「うん!」
パスタを食べ終わるとそのまま二人で一緒に風呂へ入って、新しいソファでのんびりした。二人で風呂に入って体を洗うのも後ろに関してはだいぶ慣れてきた。前は……もうちょっとかかりそう。
「もう、24時だね。そろそろ寝る?」
「……ちょっといってみたいセリフがあるんだけど……いいかな。」
「うん?もちろん。」
「……未亜、今日から一緒に寝ような。」
「えっ、あっ、うん……。」
「なんかあらためてこういう感じで誘うと照れるな。」
「えへへ、そだね……。でも、嬉しいよ。」
「改めてよろしくな。」
「うん、こちらこそ、よろしくね。」
俺の部屋に搬入されたキングサイズのベッドに手をつないで向かう。布団に入って未亜をそっと抱きしめる。新しいベッドと布団はとても寝心地が良かったけど、多分未亜と一緒にいられるからさらに良いんだと思う。
「俺もここまでできるようになった。本当にありがとう。」
「ううん、私の方こそだよ。」
ベッドが来たらいおうと思っていたことを。よし。
「あのさ、クリスマスのディナーショーがあるじゃない。」
「うん、あるね。」
「25日は横浜みなとみらいホテル東鉄だけど、その日はショー自体は20時に終わって、20時半にはフリーになるって太田さんに聴いたから横浜みなとみらいホテル東鉄のラグジュアリールームを予約した。」
「ふえっ!?」
「それとけっこう前に事務所へ行ったとき、未亜は正月も仕事がたくさん入っているって太田さんから聴いたから、せめて年末一日くらいはっていう話をして、26日は一日オフにしてもらった。」
「えっ、そこまでしてくれたの!?」
「うん、せっかくクリスマスに付き合い始めた場所であるみなとみらいにいるから……その知っての通り、体の方はまだなんだけど、それはそれとして……特別な夜にしたいなって。」
「……それってもしかして……そっか……うん……ありがとう、楽しみにしてる!」
良かった、ニュアンスは通じたみたいだ。これは二人でこれからも歩むために俺がすべき誠意とけじめだよ。未亜、本当にありがとう。
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