第十章 早緑美愛4thアルバムサイン会ツアー

第146話○早緑美愛公式チャンネル定期配信第一回前半戦

 朗読会も無事に終わり、ほっとしつつ、Twinsterをエゴサーチしてみると私の演技もけっこう評価されていて嬉しい。

 朗読会の翌日、昨日の日曜日はシークレットライブのゲネプロをしてきた。シークレットライブまではサイン会ツアーなどが詰め込まれているので、すべてをきっちり確認できて、ひとまず安心。


 そして、週明けの今日から早速配信スタジオを使った、早緑美愛公式チャンネルの定期配信が始まる。今日はその配信前に太田さんと軽く打ち合わせだ。打ち合わせの冒頭、最終的に今回のリレー配信で2番目に視聴者を集めることが出来た配信になった、と太田さんが教えてくれた。ちなみに1番は大トリを飾った鶴本さんの単独生ライブ。配信に強いへべすといろはをもってしても鶴本さんはやっぱり崩せない、それくらいあの人はすごい人だということが判る。


「次回の公式チャンネルの配信は12月30日の紅白出演前日にする予定なんだけど、紅白のリハ日程がいつもギリギリにならないと連絡来ないから決まり次第伝えるわね。」

「判りました!」

「次回の公式配信で3月のライブに関する告知もするから。」

「もうそんなタイミングなんですね!」

「実際には年明けからだけど、ファンクラブ先行、スマイルチャンネル会員先行、OSAKI WEB CLUB会員先行、ブラジリアミュージックショップ会員先行、Web先行ってまあ今回から先行販売ばかり相次ぐからね。」

「なんかすごいですよね。」

「美愛!?またそうやって他人事になってるけど、あなたのことなんだからね!?」

「もちろん!判っていますよ!」

「まったくもう……。あとは、はい、ディナーショーのセトリが出てきたわよ。」

「えーと、全会場統一で9曲なんですね。」


 セトリは、最初こそ、私発あなた行きだけど、あとはバラードで、First Impression・新たなはじまり・神泉駅徒歩2分・円山町の夜に・井の頭通りで雨に濡れて・宇田川町裏通り・神様が微笑む森・主役、となっている。


「近藤さんから連絡があって、今回管弦構成のバックバンドになるから編曲の都合で同じ曲なのね。9曲に抑えたのは100分だからよ。」

「管弦ですか?」

「バイオリンとかクラリネットとかが演奏するの。」

「すごいですね!?」

「12月13日の週のどこかにゲネ入れる予定なんだけどバックバンドの予定と大崎のレッスンルームの空きのすりあわせをまだしてるからちょっと待ってね。」

「判りました!どれもけっこう歌い込んでいる曲なので自主レッスンでもカバーできると思います。」

「お願い。もしちょっと上手くないところとか出たらすぐ教えて。先生のレッスンを手配するから。」

「はい、お願いします!」

「ちなみにディナーショーはちょっと独特だけどなんとなく判るわよね?」

「はい、鶴本さんのディナーショーを何度か見に行っていますので。客席に出て歌うとかその辺ですよね?」

「うん、そんな感じ。細かくはゲネで説明があると思う。」

「了解です!」


 軽い打ち合わせのあと、20階の配信スタジオにエレベーターで上がる。なんと初回からゲストがいて、今回は彩春が出演してくれる。圭司は今日も立ち会ってくれている。エレベーターホールに彩春と圭司がいて、雑談をしていたようだ。


「二人ともお待たせしました!」

「美愛お疲れ!いま先生にも話していたんだけど、こんな感じで親友と配信出来るなんて本当に嬉しいよ。」

「でもへべすとは何度もコラボしてるんでしょ?」

「へべすは何っていうか戦友って感じなんだ。向こうは師匠とかいってくるけど、私も彼女から教えてもらったことは多いからね。それと配信という世界ではないところで知り合った親友がこういう配信をはじめて、それに出るっていうのは初めてだからさ。」

「そうかー!そうだね、それは私も嬉しいな!」

「そういう関係いいよな。」

「うん、雨東先生も見守っててね。」

「もちろん!」


 今日の配信スタジオは新宿御苑が眺められるM01スタジオを使わせてもらえる。眺めの良い新宿御苑側は基本的に一番大きいLLスタジオが全体の半分弱くらいを占めていて、残りを半分ずつして、中サイズのM01スタジオとM02スタジオが設置されている。今後もできるだけM01かM02を使わせてもらえるそうで、今日も渋谷の高層ビル群がいい感じの借景になっていてすごいけど、こんな感じで夜景を楽しみながらの配信は楽しそう。


 いままでは大会議室だったので手作り感満載だったけど、この新しいスタジオはテレビ局のスタジオさながらの設備になっている。大崎の子会社で映像制作をしている大崎エンタテインメントは、テレビ番組の制作もしているそうで、この配信スタジオの運営はすべて大崎エンタテインメントが担当しているのだとか。

 今日の配信スタッフも大崎エンタテインメントの方が担当している。


「配信入りまーす、5秒前、4、3」


 指だけで2、1と刻まれ、0でいつものオープニング映像、そして映像終わりでキューという流れは変わらない。


「20時になりました!みんなー、こんばんは、早緑美愛だよ!もうすっかり寒くなって、早々と冬になっちゃった感じだよね。みんな元気にしているかな?」


 今日はいつも以上にコメントの流れがすごい!いろはのファンもたくさん来ているのかも。


「不定期にやっていた生配信だけど、大崎に配信スタジオが整備されたので、今後は原則として毎月最終月曜日20時から定期配信することになりました!そして、今日からスマイル動画の早緑美愛公式チャンネルに有料会員登録が出来るようになったよ!あと、早緑美愛ファンクラブ会員とスマイル動画の早緑美愛公式チャンネル有料会員になっている人だけが見られるおまけ動画も始まります!」


 おまけ動画は本編終了後にその流れで収録して、翌日夜にアップロードすることになっている。


「そんなわけで、今日から定期的に生配信をすることになったわけだけど、いきなり初回からゲストがいるよ!紹介するね、声優の岡里いろはさん!」

「こんばんは!岡里いろはです!よろしくおねがいします!」

「岡里さん、とか呼ぶとなんか慣れないので、いつも通り、呼ばせてもらうね。いろは、今日は来てくれてありがとう!」

「こちらこそ、美愛の定期放送初回に呼んでもらえるなんて、本当に嬉しい!」

「いろはとは、VTuberの日向夏へべすを通じて知り合ってね。朗読劇もこの前一緒にやったけど、一緒に遊びに行く親友なの。」


 声優「岡里いろは」とアイドル「早緑美愛」が出会った公式見解はこんな感じ。実際、大学で私が最初に仲良くなったのは朋夏で、朋夏とよく一緒にいる彩春を紹介してもらって、三人で遊びに行くようになったので、これは名前を芸名にして説明しただけなんだよね。


「三人で遊びにも行くよね。」

「うん、けっこう仲良くしてるんだ。あと、そうだね、雨東さんもいろはとはあったことがあるよ。うちにも来たし、私たちもいろはの家に遊びに行ったよね。」

「うん、来てもらったね!けっこう家が近くてね。」


 これもうそではないよ!なにしろ同じ階だからね!


「この前、へべすの配信に出たときはあの後食事もしたよね。」

「私とママダPでご飯作って重箱に詰めて持っていった!」

「もちろん、朗読劇の脚本担当で原作の作者である雨東さんも一緒に食べたよ。」

「五人で話が盛り上がったよね。本当はここなちゃんも呼びたかったけど仕事だったから残念。」

「私のファンのみんなは知っていると思うけど、儘田さんは私の歌っている『主役』と『いつもあなたのそばに』の作者さんで、この前の朗読劇では音楽を担当してくれました!」

「実は私と関係が深くてね。」

「曲作ってもらったんだっけ?」

「そうなの。知っている人は知ってるんだけど、私、西陣つむぎっていうVTuberやっててね。そのときに出した自主制作のCDに曲を書いてもらったんだ。」

「初めて顔を合わせたときから一番親しい感じだったよね。」

「あったことはなかったんだけど、いい曲作りたくてかなり突っ込んだ話をしてね。それで仲良くなったんだよね。」


 ここ、実はほぼ台本通りに話をしている。「儘田先生とみんなの関係を公開しておかないと動きにくいでしょ」という太田さんの配慮。本当にありがたい。


「朗読劇のBGMすごかったよね。」

「さすがママダPっていう感じだった!」

「朗読劇はアーカイブでまだ見られるのでぜひ見てみて下さい。えーと一週間だったかな?」

「スタッフさんからカンペが出たね。今週の土曜日23時59分まで見られるって。」

「だそうです!」

「MCに手抜きされた!」

「えへへー。」

「代読した分は今度晩ご飯をごちそうしてもらうということで。」

「判った!雨東さんに作ってもらうね!」

「あっ、責任回避だ!」

「雨東さん優しいから大丈夫だよ!」

「フィアンセだもんねー。」

「紅白の記者会見で何かいわれたけど、まだ違うからね!?」

「まだ、なんだー!」

「あっ。」

「美愛が真っ赤になってしまったけど、雨東先生が優しいのは本当だよね。毎晩、先生が晩ご飯作ってくれるんでしょ。」

「うん、夜遅くまで仕事をしていることが多いから。」

「ほんと、二人はいい関係だよ。」

「褒められると照れるなあ。あっスタッフさんからコメントを読んで下さいっていう業務連絡が来たので、コメントから適当に拾ってトークしていきます!」


 へべすほどはうまくできないと思うけど、頑張るぞ!

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