第026話○同棲生活スタート!
いよいよ二人だけの生活が始まる。
「一人暮らしがしたい」という私のささやかな願いがまさかこんなにも素敵な話になるとは思わなかったけど。
まず、まだ段ボールの中に入っていた下着なんかの荷物を取り出してタンスにしまったり、お皿の並べ方を変えたり、小物類を並べたり、私のコップと歯ブラシの隣に圭司のコップと歯ブラシが並んでいるのを見てちょっと幸せを感じたりしていたらあっという間に17時になっていた。
「片付けも一段落したし、まずは家事の分担を決めるか。」
「どんな感じにしようね。」
決め事はいろいろとすぐに決まっていく。
一番大事なお金については、圭司が使わずにそのままにしていたネオン銀行の口座を生活費専用にして、そこへ二人とも毎月同じ金額を入れてプールしておく。圭司の方でもう一枚代理人カードというのを作って私もその口座にお金を出し入れ出来るように手続きしてくれるそうだ。家賃以外でかかる食費とか光熱費とかは、圭司が作ったYakutenのクレジットカードに全部集約して支払って、その銀行口座からの引き落としにする。このクレジットカードは同棲カップルでも家族カードっていうのを作れるんだって。
「あと予定は二人で共有できるようにゴッゴルカレンダーへ入れておこう。面会する担当者の名前とか連絡先を入れておけば緊急の時に役立つと思うんだよね。」
「それいいね!」
予定をお互いに把握できるようにするのはすれ違いもなくなるしいいよね!それと日常生活についてもいろいろと決めた。
「洗濯が一番問題かな、と思うんだけど、その、未亜は、抵抗ない?」
「ちょっと恥ずかしいけど、一緒に住む以上は、そこは気にしないよ!でも、洗濯はスイッチ入れたら乾燥まで全自動だからね。乾燥したらそれぞれたたんでしまえばいいわけだし。」
「取り出すときだけか。」
「うん。量が多くてガス乾燥機を使うときも取り出して入れるだけだから。」
洗濯は朝出かけるときに回し始めて帰ってきたらお互い取り出して自分でたたむことにした。どちらかが忙しければ気にせず下着類もたたんでベッドに置いておくことに。
「レディスのたたみ方をMeTubeとかで調べておくよ。」
「私はメンズを調べておくね。」
料理は二人で一緒に作るけど、片方が忙しいときはお互い助け合う。
掃除は私が自宅から持ってきたロボット掃除機の予約設定を平日10時スタートにして、帰ってきたらステーションにたまったゴミを圭司がゴミ箱へ捨てる。圭司が忙しいときは私がする。
ゴミ出しは私がまとめてエレベーター脇のゴミステーションへ入れる。私が忙しいときは圭司がする。圭司はこの辺理解と決断が早いからあっという間に決まっていって本当に助かるなあ。
「あと決めておきたいのは、イライラしているときに必ず『いまイライラしている』と明言すること。」
「えっ?なにそれ?」
「二人で生活していると忙しかったり、気分が乗らなかったり、女性は月のものとかもあるし、絶対にイライラするタイミングが出てくる。」
「あー、それはありそう。」
「そういうときってだいたい二人ともそういう気分になりやすいはずだから、相手の状況を察することが出来なくて、意味のないケンカになりがちだと思うんだ。」
「なるほどね。ちゃんと表明することで変な衝突をしないようにするっていうことね。」
「うん、そういうこと。もちろん意味のあるケンカはいいと思うんだ。でも気分がイライラしているということでするケンカは関係を悪くするだけで無意味だと思うんだよね。」
「それはそうだと思う。」
「あと、イライラしていると表明するときは、何にイライラしているのかも明言しよう。」
「例えば?」
「眠くてイライラしているとか、風呂が焚けていなかったのでイライラするとか、理由がよく判らないけどなんかイライラするとか。」
「判った。うん、それはシュールだけど必要だと思う。そうしよう。」
こういう発想が出来るのも圭司のすごいところだと思う。
「こんなところだよね。じゃああとは晩ご飯をどうするかだね。」
「何も買ってきてないから冷蔵庫は空っぽじゃないか?」
冷蔵庫を空ける私。
「空でした……。」
「さすがに太田さんもそこまでは面倒見てくれないよ。」
太田さん、ごめん、ちょっと期待してました。
「じゃあ、何か取るか。」
「引っ越しといえばつきものがあるよね!」
「……もしかして引っ越しそば?」
「うん!」
「わかった、まずはそば屋がリストにあるか見てみよう。ちなみに引っ越しそばって自分で食べるんじゃなくて近所に配るものだけどね?」
「へー!自分で食べるもんだと思ってた!」
圭司はいろいろ詳しいよなあ。さすが作家さんっていう感じ。
そしてセキュリティが万全なだけに逆に出前を自由に頼めないのは不便だけど仕方ないのかな。圭司が読んでくれた
「そば屋あるね。」
「ざるそば!」
「はいはい。」
「どうやって注文するの?」
「ファミレスとかにあるタッチパネル式の注文システムと同じだな。」
「本当だ。へー、こんなに便利なんだね。」
圭司が操作をして注文してくれる。
「よし、これでOK。あとは警備員室から注文してくれて、届いたら警備員さんが外の宅配ボックスへ入れてくれる。宅配ボックスに入るとインターホンが鳴って知らせてくれるっていう仕組み。」
「すごいね!」
「出前とか配送業者とかを装って住居に侵入するケースも多いからそういうのを防ぎたいっていうことなんだろうな。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
おそばも食べ終わり、お風呂に入って、ルームウェアに着替えたあと、居間のソファに並んで座る。手をつなぎながらぴったりとくっついているだけでものすごい幸せ。
「なんかいろいろあったけど、ここから二人で新しい生活を一歩ずつ進めていくんだな。」
「……うん。」
「二人のペースでゆっくり進んでいこうな。」
「うん。そだね。」
なんとなく目線が合う。ふと目を閉じても特に反応がないので薄目を開けたら圭司は固まっているようだ。えい、私からしちゃえ!圭司の方に唇を寄せて少し長めのキス。離れたあとうれしさと恥ずかしさとで思わず抱きついちゃった。
「二人で幸せになろうね。」
「ああ、二人で。そのためにもお互い絶対に気持ちを溜めないようにしよう。俺も思ったこととかちゃんと伝える。だから未亜も、な。」
「うん、たまにはけんかもしちゃかもだけど、ちゃんと話をして、向き合えば、私たちなら絶対に大丈夫。」
「うん、俺たちなら大丈夫、うん大丈夫だよ。」
私は圭司の肩に頭を乗せた。同棲したからといっていきなり手を出してこない。ちゃんと私のことを大切にしてくれる。少し奥手なのかもしれないけど、恋愛経験のない私にはそれくらいがありがたい。少しずつ関係を深めていきたいなあ。
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