幕間◇見たことのある本
「第06話○ファミレスでのんびりお話」の圭司視点です。
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連休が明けた初日だった。未亜は一冊の本を取り出すと俺に読むように薦めてきた。
未亜が薦めてくれた本の著者は
俺は昔から本が大好きで小説やら随筆やら論説やら、図書館にあった本は片っ端から読みまくっていた。あらかた名作を読んだ俺は、小学生の頃からWeb小説サイトにハマっていった。特に15歳になった秋以降は、高校受験のため、自宅で家庭教師についてもらって勉強する合間にたくさんの物語を読みあさった。そのうち自分でも書いてみたくなり、無事高校に合格したのを記念して試しに短編のファンタジー物語を投稿したのが最初。
PVとしては1,000いかないくらいであまり伸びたとはいえない部類だったが、たまたま編集者の目に付いたらしく、この短編をプロットにして連載をしてみて欲しい、内容が良ければ書籍化したい、という連絡をもらった。別に損するような話ではなかったし、もともとこの短編を長編に書き換えていこうと考えていたので、依頼に書いてあったアドバイスをもとに高校入学と同時に連載を書き始めた。
最初は全く見られている感じすらしなかったが、そんなもんだろうと隔日で投稿を続けていたら、少しずつ読まれるようになり、30話くらいで星の数が100になった。50話10万字を超えた頃には5万PVを突破してトップページの注目作品にもよく出るようになり、応援コメントもちらほら付くようになった。
転機になったのは、敵だと思っていた存在が実は味方だった、という新章に突入したあたりで、そこから一気にPVが跳ね上がり、連載開始から1年、高校二年になったばかりのタイミングで最初に連絡をもらった編集者から書籍化の打診をもらった。
第1巻はそこから半年くらいしたタイミングで発売され、重版まではいかなかったものの、それなりに売れてくれた。おかげで第2巻の刊行も無事に決まって、高三になった春に刊行となった。第2巻は重版がかかり、おかげで高三の2月にはコミカライズが発売された。
大学入学とほぼ同じタイミングで第3巻が発売、サイン会の開催も発表、さらに第2巻が書店大賞の10選にノミネートされた。サイン会の前日にはアニメ化の発表もあった。Web作家としてはかなり順調な駆け出しといえる。
ランチのあとは、用事があるという未亜とわかれて、家に帰る。連載を進めようとパソコンを立ち上げるが、今日の衝撃が大きくて筆が進まない。
「この渡された本をどうしようかなあ。サイン入れて返すのもおかしいし。でも、あれだけ好きでいてくれるならいつかはちゃんと説明をした方が喜んでくれそうな気はする。」
自分が雨東であることは、両親と妹、KAKUKAWA以外には一切教えていないし、知られていない。面倒くさいことになるのがいやで高校の友人などには一切話をしなかった。でも、未亜のことは信頼しているし、なにより大好きだから教えたい。今年中に4巻が出るからサインを入れてプレゼントするのが面白いかもしれない!とりあえず借りたこれは来週の月曜とかに返そう。
それにしてもあのときは緊張しまくっていたから全然気がつかなかったなあ。まあ、暗室みたいな所にいたからそもそも顔も見ていないし、声も聞き取りづらかったんで判らなくても当たり前なのかもしれないけど……。
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