第73話 テスター

 朝飯の用意をしていると、アントニー・ロペスから声がかかった。


 「あの、星野様は、大魔導士様なんでしょうか」


 「いや、違うけど、ところで腰はどう?」


 「おかげさまで、もうすっかり良くなりました、ありがとうございます」

「それで私たちは、まだ仕事をいいつけられてないのですが、何をすればよいのでしょうか?」


 「テスター」


 「テスター?」


 「今住んでいるホテル、まあ宿屋ね、これお金取って貸す予定なんだわ」

「で、うちの宿屋、かなり特殊なので、試してもらって」

「なにか不具合がないか、どれ位が適正価格なのか、調べてもらっている訳」


 「確かに、あのトイレ?とかいうのは便利ですね、外にいかなくても用が済ませるし」

「あの冷蔵庫とか、すぐに冷たい飲み物が飲めるのはありがたい」

「私は王都に行ったことはありませんが、王都でもこんな暮らしはできないと思います」


「でしょ、あとはその特殊な物を、うまく説明しないといけない訳」

「ちゃんと、うまくお客様に、伝わるように、考えておいてね」


「わかりました」


「じゃ、朝飯にしよう」、今日はコ○ダのモーニング、サラダ付きだ。

  

 朝食を並べていると、ペレイラとノートンから声がかかった。


「あの、私たちたいへん美味しい物をいただいてますが、その、手伝わなくてよろしいのですか?」

「それに、ご主人様と一緒に食事をするなど・・」


 「ああ、かまわない、その方が効率的だし、すぐに意見も聞けるし」

「みろ、ミーシャとか、美味しいにゃとか、これは味が濃いにゃとか」

「思ったことを即、口に出してるし、それで構わない」


「わかりました」


「そのうち、給仕とかやってもらうから、よろしく」


 こうして、一日の朝が始まっていくのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る