第23話 祝勝パーティー開催!


「――それでは、協会からのクエスト達成を祝して……乾杯!!」


「「「かんぱーい!!!!」」」


 『虹の蝶』ギルド内の酒場にて、乾杯の合図と共にグラスをかち合わせる音が所々から響き渡る。


 マキナ達が闇ギルド『影の悪魔』を壊滅させてから3日後、彼らの健闘を労うための祝勝パーティーが行われていた。


 内装を彩る飾り付け、テーブルに所狭しと並べられた豪華な食事、普段の酒場のメニューも用意されていた。


「いやぁ幸せですなぁ……!」


 アリアは料理をどんどん口に運ぶ。


「アリア、祝勝パーティーとはいえ食べすぎるなよ」


「大丈夫だよマー兄、そんなに羽目を外すほど私は子供じゃないよ」


「お前の皿に盛られてる量ほど羽目を外してる物もないぞ」


「にゃ!?」


 アリアの皿には巨大な料理のタワーが出来上がっていた。


「いつもに比べたら全然少ない、少ないから!! セーブ出来てるよ!!」


「確かに普段のお前で考えたらまだ序の口なのかもしれない、でもそれ5皿分はいけるだろ、というかいくつもりだろ?」


「......10皿は堅いね!」


「食べすぎだ!」


「まぁ良いじゃないかマキナ、今日くらい大目に見ても」


「ここのテーブルの半分の量を既に食べ終わってるんだぞ」


 やれやれと言った表情のベローネに、マキナはため息混じりに返す。


「でもこんなパーティー開けるくらいのお金をポンと渡してくれるなんて、協会も太っ腹よねー」


 ステラの言う通り、今回のお礼の意味を込めてギルド協会が報酬金とは別にパーティーの費用を負担してくれたのだ。


 よほど受注されなくて困っていたんだろうな......とマキナは一人で結論付ける。


「私達を祝福してくれる為のパーティーなのだからな、楽しんでも誰も文句は言うまい」


「ま、それもそうか」


 せっかくだし俺もゆっくり楽しませてもらうか。


「ーーマキナさん!」


 不意に声をかけられた、『影の悪魔』壊滅の帰りに出迎えてくれた魔導士の女の子だった。


「その、こないだマキナさんが教えてくれた武具店、品揃えもよくて......探してた月光石が置いてあるからびっくりしちゃいました」


「鉱石屋でも売ってるとこ限られてるからな」


 マキナはギルド内でサルマ武具店の事を宣伝していたのだ。皆にも好評らしく、ここ数日のお客の7割は『虹の蝶』の団員というのを店主から聞いていた。


「教えてくれてありがとうございます、それだけは言いたくて......」

 

 魔導師の女の子は照れながら言った。


「気に入ってもらえてよかったよ」


「ーーあ、ラティナがマキナさんと喋ってる!」


「ずるい!」


 この声を皮切りに、マキナ達のテーブルに団員が集まり出した。


「クエストお疲れ様です、たった4人で闇ギルド壊滅なんて凄いっすよ!」


「ワイバーンを倒した時の話聞かせてくださいよ!」


「どの武器が1番得意なんですか!?」


「マキナさんの魔導武器見てみたいです!」


「全部でいくつあるんですか!?」


 どうやら皆タイミングを伺っていたらしい、一気に集まったので軽いパニック状態になった。


 横を見やるとアリア達も同じように質問攻めに合っていた、増援は望めそうにない。



 ◇



 そんなこんなで約1時間、

 ようやく解放されたマキナはテーブルに身体を預ける。


「つ、疲れた……」


 今までのモンスター討伐や鍛冶業務も大変だったが、むしろそっちの方がマシなんじゃないかと思うくらいに疲弊していた。


「でも、嬉しいな」


 ポツリと呟く、

 ジュダル達には武器の良さを一切分かって貰えず、雑に扱われていたマキナにとって、素直に自分の武器に興味を持ってくれるのはやっぱり嬉しかった。


「終わったようねマキナ! こっちよこっち!!」


 先にひと段落着いていた3人は隣のテーブルに移動していた。


 ステラはバンバン! と自分の隣の椅子を叩き、座るように催促する。


「お疲れマキナ、大変だったな」


「マー兄が1番多かったもんねー」


 アリアは骨付き肉を頬張りながら言った。


「一生分喋ったような気がするよ」


 マキナが座ると、ステラがご満悦な顔を浮かべる。


「それじゃあ早速なんだけどさ、アタシ達の中で誰がパーティーリーダーになるか決めとかない?」


「さんせー!」


 パーティーリーダーか、

 そういえば闇ギルドのルゴスとかいう奴に勘違いされたっけな。


 あの時はまだ決める前だったし、このタイミングが丁度いいかもしれない。


「ちなみに、リーダーになりたいって人はいるか?」


「私は特に思わないな〜、でもなって欲しい人はいるかな?」


「アタシも1人いるな」


「奇遇だな、私も推薦したい人間がいる。君たちと同じかもしれないな」


 3人がジーっとマキナを見つめる。

 その視線で彼女達の思い浮かんでいることが何となく分かる。


「……へ、俺か?」


「決定だね〜」


「ま、アンタしかいないわね」  


 どうやら3人とも意見を曲げるつもりは無いらしい。


「と、言うわけだ。私達を纏められるのは君しかいない、観念しろマキナ」


 頬を緩めながらベローネは言った。


「この先、苦労しそうだな」


 思わず釣られて笑ってしまう。

 今のマキナには、お互いを信じあって共に行動する仲間がいる。


 これも今までの彼の周りではあり得なかったことだ。


「それじゃアタシ達のリーダーも決まったことだし、エールでも飲みましょーよ!」

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