第6話 討伐クエスト、楽勝でクリア!


 マキナとアリアはギルドから出てハウンドウルフが目撃された森林を目指す。


「ねぇねぇ、マー兄はワーウルフとは戦ったことあるの??」


「1度だけあるぞ」


「やっぱり強かった?」


 アリアは不安そうに尋ねた。


「ああ、物凄くな、でも問題なく倒せたぞ」


 そんなアリアを尻目にマキナはあっけらかんと答える。


「そっか〜、やっぱりマー兄は強いなぁ」


「ワーウルフがいたら俺が戦うからな、その時はハウンドウルフを頼むぞ」


「はーい!」


 そんなこんなで森林に到着。

 一面に緑が生い茂る空間に入り込んだ2人は周りを見渡しながら奥へと進んでいく。


「……みつけた!」


 そしてアリアがハウンドウルフを発見、

 約10メートル先で群れを成しているのをマキナも肉眼で捉える。


 茂みに隠れ、再度状況を確認。

 全部で20匹、ワーウルフの姿は見えない。


「俺の杞憂だったか」


「でも確かに珍しいかも、こんな数のハウンドウルフなんて」


 すると1匹の目に傷のあるハウンドウルフがマキナ達に気付く。

 喉を鳴らしながら威嚇をすると、残りのハウンドウルフが一斉にマキナ達に向かって駆け出した。


「あの傷有りがリーダーだな、行くぞアリア!」


「うん!」


 マキナはイフリート、アリアはオルトロスを装備し、戦闘態勢に入る。


 先陣はマキナだ。


「はあああ!!」


 炎を纏った剣身のイフリートで、向かってくるハウンドウルフに斬り込んでいく。

 ハウンドウルフから燃え盛る炎、しかし草や木々に触れてもその火は移ることはない。

 立ちはだかる敵のみを焼き尽くす炎、炎魔剣イフリートの能力だ。


「すごい! 私も負けてられない!!」


 アリアはその場を踏み締める。

 一瞬にも満たない速度でハウンドウルフの側を縫うように突き抜ける。

 するとハウンドウルフ全員にほぼ同時にダメージが入る。すれ違うと同時にアリアが攻撃を繰り出したのだ。


 使い手に【疾風の加護】を与える、オルトロスが持つ能力だ。


「すごい……風になったみたい! これがオルトロスの力なんだ!!」


 ツインダガーは超近距離の武器。

 それを普段から使っていたアリアであれば、その上位武器のオルトロスはどんな武器よりも彼女の真価を発揮させることが出来る。


 瞬く間に15匹を倒し、残りは5匹。

 背中合わせのマキナ達を取り囲むようにハウンドウルフは様子を伺う。


「よし、このまま押し切るぞ」


「了解!」


 その場でステップをし、調子を整えるアリア。


 すると、傷有りのハウンドウルフが震えだす。

 身体は膨張し、はち切れるようにその真の姿を現す。


 グオオオオオオーーーーン!!!!


「……偽装していたのか!」


 ワーウルフ、やはり潜んでいたか。

 鋭い牙で埋め尽くされた口を大きく開けながらアリアに襲いかかる!


 グオオオオ!!


「ひっ!?」


 マキナはアリアを庇うように立ち、渾身の蹴りを喰らわせる。不意の一撃を貰ったワーウルフは吹っ飛び、近くの大木に激突した。


 グオオン!?!?


「お前の相手は俺だ」


 ワーウルフはすぐさま立ち上がると、目標をマキナへと変えた。


「ありがとうマー兄!」


「気にするな、残りは頼むぞ」


「うん!」


 ワーウルフとハウンドウルフを分断し、それぞれで対処。想定どおりの形だ。


「思えばあの時もそうだったな」


 マキナは想いにふける。


「初めての武器の性能テストの時にワーウルフと遭遇したんだっけ。あの時は俺が負けた・・・・・、命辛々帰ってきたんだ、奇跡だったよ」


 マキナは言葉の通じないワーウルフに語りかける。

 過去にワーウルフを倒したと言ったのは、アリアを心配させないためだった。


「そこからだ、命をかける冒険者の力になりたい、どんなモンスターにも負けない武器を作るって、きっかけを貰ったんだ」


 イフリートを握る手が強くなる。

 感情と同調するように、剣身の炎が勢いを増す。


「俺は、あの時とは違うぞ」


 グルオオオオオ!!!!!!


 飛びかかるワーウルフ。

 マキナはイフリートを構えた。


「はあああああ!!!!!!」


 爆炎を纏った剣はワーウルフの胴体を捉えた。


 グルオオオ……!?!?


 イフリートによる傷跡から燃え上がる炎に包まれ、ワーウルフは絶命する。


「残りも倒したよマー兄!」


 アリアの方も無事に討伐出来たようだ。


「こっちも終わった」


「やった! それにしてもこのオルトロス凄いよ、私一生大事にする!!」


 アリアはオルトロスを胸に抱きしめる。


「作ってくれてありがとうっ!」


 ピンクのショートヘアを揺らしながら笑う。

 ツインダガーを渡した時と同じ顔をしていた。

 思えば作った武器を感謝してもらえたのは久しぶりだ。


 この感覚が好きで鍛治師を始めたんだっけな。

 それを、またアリアが思い出させてくれた。


「いいってことよ」


「あーもしかして照れてる〜??」


「照れてない」


「嘘だ」


「照れてない」


「ならこっち見て言ってよ」


 スタスタと歩くマキナ。


「暗くなる前に帰るぞ、討伐証明は牙だったよな」


「あー逃げた! 街に帰ったらギルドの酒場で打ち上げだからね!!」


 こうして、マキナ初のクエストは無事成功したのだった。

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