第23話⁂ラーメン倉庫の火事!⁂




 ラーメン倉庫が炎に包まれ大惨事となったあの日、2002年6月。

 ミッドナイトブルーに包まれた夜のハイウェイを、北山のBMWで駆け抜けたあの日。


 暫く車を走らせると……。

 漆黒の闇から真珠やルビーのように、色鮮やかに光る夜景群が澄んだ外気に映って一層鮮やかに映え……。

 ラジオから丁度ユーミンの中央フリーウェイが流れて*☆⋆* ・


 こんな美しい宵闇の・・ハイウェイと・・ミュ-ジックと・・一見幸せを絵に書いたような……こんな夜に・・・まさかあのような残虐な事件が起きようとはだれが想像できただろうか……?


 あの日の深まりゆく夜に帰宅した、北山と琉生は渋谷のラーメン倉庫の二階で寛いでいる。

 北山は疑似親子体験に夢心地だ。


 どの位経ったのだろうか、北山はうつらうつら半寝入り状態だ。

 すると琉生は隠し持っていたダンベルで北山を殴り付ける。

 急所を外した琉生は尚もダンベルを振り下ろす。


 だがその時{殺されては堪るものか!}とむっくり起き上がった北山は

「琉生一体何故こんな事をするんだ?俺は……琉生を…琉生を子供のように思っている・・それなのに…何故こんな事を?」


「グウウウウウゥゥ!ウォ——————ッ!ガァ――――———ッ!」

 琉生の目は血走り、只の狂った獣にしか映らない。


「琉生どうした?オイ!琉生どうしたんだ?…しっかりしろ!」

「アアアアアア———!止められない‼嗚呼!あああ!アアアアアア!興奮が抑えられない!血……血がアアアア!」


「何を言っている~?しっかりしろ!……気でも・・気でも狂ったのか~?」


「アアアア!鮮血が・・鮮血を浴びたい!・・嗚呼ああアア!」


 尚もこの狂った琉生を正気に戻そうと「オイ!オイ!オイ!」

 そして琉生の頬っぺたを何度も叩く北山なのだ。


 するとその時、ハッと我に返った琉生が恐ろしい形相で、北山を睨み返して大粒の涙を流しながら……。


「おじちゃん今更遅いんだよ!もう戻れないんだよ!…………だって…そうだろう?……小さい時のおじちゃんの暴力の酷い事と言ったら……俺は…怖くて怖くて………どうしたらこの恐怖から抜け出す事が出来るのか?……ある日……偶然に毛虫を踏ん付けたんだ……すると…………毛虫が這いずり回り………やがて………動かなくなったんだ………アアアア!小さいながらに……?優越感………いや~?違う……潰れた毛虫の………汁……中身……?その時の………ゾクゾク感!……アアアア!忘れられない

……それから益々酷くなる暴力と暴言……それなのに……アアアア………母ときたら……母性も忘れ……只の愚かな女になり下がり………子供を助けるどころか…一緒になって見ている………あの姿に………もう限度を越してしまったんだ………この限度を越してしまった………精神のコントロ-ルを失った…俺の最後の砦は動物を傷付ける手段だったんだ!………すると暫くは安静を保つことが出来た………その内…快感…?最初はもう止めよう!絶対止めよう!そう思ったさ……だけど………おじちゃんの暴力が益々加速して………それの穴埋めをするように、段々大きな猫や犬に移って行ったんだ……アアアア!その内にアアアアアア!人殺しの快感が忘れられなくなってしまったんだ……アアアアアアアア!真っ赤な血が……嗚呼ああ!血しぶきが……ああああああ我慢が出来ない!」


「化け物・・・化け物だ!」


 傍に有った箱型パソコンを、琉生目掛けて投げ付けた北山。

 北山にしてみても、放っておいたら自分がいつ殺されるか分かったもんじゃない。

 致し方ない事だ。


 北山は若気の至りで、あの頃は欲望が抑えきれずに、只々琉生が邪魔で邪魔で行なった行為なのだ。

 まさかこんな事になろうとは思ってもみなかったのだ。



 そして、この現状を隠しカメラでしっかりと監視していた人物がいる。

 そう、幸三郎と琴美だ。


「これは大変な事になる!琉生が……琉生が死んでしまう!」

 そこで2人は昴も連れて渋谷のラーメン倉庫に向かう。


 そこで足早にラーメン倉庫の二階に上って、部屋の中で見た北山と琉生の異様な光景に啞然とする。


 その後、真っ赤に燃え上がる火の手を後に、逃げるように帰った幸三郎と琴美更には昴なのだ。


 そういえば昴が、幼い頃に見た真っ赤に燃え上がった炎は、この事だったのかも知れない。

 幼少期の事は前後左右する事もあるから……?


 それでも昴は、そこで拭い去ることの出来ない恐ろしい現場を、目の当たりにしているのだ。

 それは一体何だったのか?

















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