第25話 どうやら資格試験に合格したようです

 魔法の説明をまだまだ続けます。

 氷の説明をする為にビーズを買って来ました。


「物質とはこのビーズのような物です。浮遊フロート

「浮かんだ」

「浮いたわね」


「こうやって空気に浮かんでいる状態が気体です。水でいうと湯気の状態です。魔法を切って落ちたのを拾い集めるとこれが水の状態です。更に糊で固めるとくっ付きますよね。これが固体です。言わば氷の状態ですね」

「でも、おかしいよ。水に魔法や糊はないよ」

「そうね。納得いかないわ」


「その役割を果たすのが温度です。冷えれば湯気は水になり、もっと冷えれば氷になる。私も詳しくは知らないのですが、物質を構成している粒は温度が高くなると振動が大きくなります」

「激しく揺れていると固まらないよ」

「そういうイメージなのね」


「さあ、やってみましょう。アイス

アイス。できた。アイスジャベリンもできるかな?」

「ええ、出来るでしょう」


アイス。今日はお祝いしても良いくらいだわ。今なら大学の試験にも合格するかも」


「まだまだ、行きますよ。次は火です」

「私は出来るわよ」


「では見ていて下さい。ろうそくとコップを用意します。点火イグニッション

「ろうそくに火が点いた」


「そうですね。これにコップを被せるとどうなります?」

「変わらない」


「ところがですね。よく見てて下さい」


 皆でしばらく、ろうそくを見つめます。


「うわっ、消えた。何で?」

「私も知りたいわ」


「空気中には酸素という物質があって、燃えるのにこれが必要なのです」

「コップの中の酸素が無くなったって事」

「へぇー、そうなっているんだ」


「火が点くには三つ要素が必要です。温度、燃焼物、酸素です。温度は物質の振動だと言いましたよね。ではイメージして、点火イグニッション

点火イグニッション。火打石がもう要らないと思うと、おいらとっても得した気分だ」


「次は浮遊です」

「おいら、空を飛びたいと前から思ってた」

「ちょっとどんな実験をするのか興味がでてきたわ」


 私は果物を手に取ると床に落としました。


「どうです。何か分かりましたか」

「おいら、分かんなかった」

「私もよ。それが何?」


「落ちるという事がおかしいのです。何もなければ落ちないで浮かんだままです」

「そうなんだ」

「なるほどね。そう考えるのね」


「地面には引っ張る力。重力が働いています。これを無効化すれば浮きます。浮遊フロート


 果物が宙に浮かびました。


浮遊フロート。スプーンが浮いたよ」

浮遊フロート。浮いたわね。重力っていうのを意識すれば良かったのね。目からウロコだわ」


「今日はこのぐらいにしておきましょう。タス君、私の仕事はどうですか? 依頼達成ならサインを」

「追加報酬を出したい」

「その言葉だけで十分です。さあ、遊びに行っておいで」


 私は夕方までに聖なる光、生水、氷、点火、浮遊のマニュアルを書き上げました。

 冒険者ギルドに行きドミニクにマニュアルを差し出しました。

 ドミニクは少し驚いたようです。


「こんなに早く出来たの。インチキじゃないでしょうね」


 ドミニクはマニュアルを読み始めます。

 読み終わり、そして。


生水メイクウォーター。きゃあ、濡れたじゃない。もう、お漏らししたみたい」

「信じないからそうなるのよ。キンロウが嘘を付いた事なんてないでしょう。好きな人の事を信じないなんて、愛が足りないんじゃない」

「まあまあ。ところでマニュアルはどうでしょうか」

「金貨100枚で売れるわね。沢山売るのなら一冊、金貨10枚ぐらいかしら。えへへっ、これで私は当分トップね」


 ドミニクの目が金貨を数える時の目になってます。


「私の取り分を全部、孤児院に寄付して下さい」

「欲がないのね。分かったわ。全国のギルドを通じて寄付させてもらうわ」


 社員寮に戻ると部下が期待に目を輝かせて待っていました。

 レポートを読んで評価を下します。


「合格は胴元のグループとビックベアの討伐グループです。残りの3グループは罰ゲームです」

「くそっ、ずるいよな。賭け事の胴元は儲かるからな」

「じゃあ、やってみろ。お前に素早い計算が出来ればな」


「いいですか。知識は力です。知っている方が知らない事より良いのです。各自、努力して下さい」


 今日は知識の力を実感しました。

 ナノマシンの扱いに知識が必要だなんて知りませんでした。

 しかし、頷ける話です。

 車の運転だって免許がないと出来ません。

 知識が免許代わりなんですね。

 免許の合格点は低いようです。

 現にティアは燃焼の仕組みを知りませんでした。

 火は熱いという事と、燃える物がないと駄目だという事と、風を送ると激しく燃えるという事だけです。


 さて、夜勤に行きますか。

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