第5話 仕事道具を手に入れる
「牙の大きさで見当はついていたけど、キングボアの魔石ね。金貨500枚はすると思う。オークションに掛けなくていいの」
ホワッツ、金貨500枚ですとー。
時価総額いくらでしょう。
金貨1枚が10万円だとすると5000万円。
国宝級には少し足りないですが、やはり原住民のお宝でしたか。
「ええ、買い取りをお願いします」
「分かったわ。ところで収納バッグを買わない?」
「それは何でしょう」
「物が沢山入る魔道具よ」
子供の頃に読んだ青い狸のポケットですな。
ナノマシンやワープが実用化されているのですから、そういう事もあるでしょうね。
おっさんにはついていくのがやっとです。
そう言えばスマホみたいな端末がないですね。
あれって難しいので嫌いなんですよ。
おっさんには使いこなせない。
文明が進むと端末は必要なくて音声入力のみになるのですかね。
「ほう、そんな物が実用化されているのですか。いくらですか」
「金貨100枚よ」
おー、1000万円。
なるほど一攫千金した社員には物を売りつけて搾り取るのですな。
英語教材を社員に売りつけた会社に勤めていた事がありますが、似たようなものでしょう。
金は使わないと経済が回らない。
常識ですので。
「買わせて頂きます」
「それとね。風の魔剣があるんだけど、安くしとくわ。金貨200枚よ」
「買わせて頂きます」
「オーガの皮鎧もいってみる。金貨200枚よ」
「はい、買わせて頂きます」
「好きよ。愛してる。今度デートしましょ。ドミニクよ、よろしく」
「こんなおっさんで、よろしいのですか」
「ええ、もちろん」
接待で一度銀座の高い店に行きましたが、それを思い出します。
そこの女の子と同じ匂いがします。
まあ、デートぐらいは良いでしょ。
ボトルを入れてと言われたらノーサンキュウですが。
会社の直営店でしたら、可能な限り売り上げに協力します。
オーガの皮鎧を着せられました。
ぶかぶかだったんですが、魔力というのを通したら丁度良くなりました。
おー、サイズ調整機能付き。
おっさん、驚きでもう付いていけません。
風の魔剣の試し斬りをしたのですが、石が豆腐みたいに切れます。
おっさんには不似合いですが。
猪が象の大きさから考えますと、大型トレーラーの何倍もの大きさの野生動物が来る可能性もあります。
そうなったら、ひとたまりもありませんので、武装は必要でしょう。
ここの動物は遺伝子改良を受けてますね。
放し飼いの意味は分かりませんが。
食糧危機に備えての実験かも知れません。
会社の方針には従います。
異議は申しません。
収納バッグを起動してみます。
これはほとんどポーチです。
腰に巻いて装備します。
象牙ほどの牙と牛四頭分ほどの皮が難なく入りました。
これは便利です。
流石1000万。
トレーラー並みだと思っておけばいいでしょう。
買取所を目指して歩きます。
途中、同僚3人が道を塞ぎました。
「装備を置いていけ」
ここはメインストリートですよ。
追いはぎには場所が悪いと思うのですが。
頭が足りない方々なのかも知れません。
「それは出来ません。会社の上司の命令なら一考の余地がありますが」
「何言っているのか分からねぇ。狂ったのか。かまわねぇ、力ずくだ」
「おう、やるぜ」
「少しは楽しませろよ」
抜かれて斬りかかる剣の軌道が見えます。
遅い、遅すぎる。
ひょっとしてナノマシンの恩得を受けてない。
正社員ではないのでしょう。
もしかして素行不良で解雇済みとか。
遠慮は要らないようですね。
魔剣を抜くまでもありません。
ジャブを軽く3連打。
全員の歯が飛び散ります。
治療費は払いませんよ。
会社の命令なら払いますが。
弱いですね。
ジャブだけで終わってしまいました。
「ひっ、許して下さい」
「私は企業戦士です。会社の命令ならば紛争地帯にも喜んで派遣されます。あなた達にその覚悟がありますか」
「何いっているのかわからねぇ」
「戦争の真っ只中に飛び込めるかと聞いているのです」
「狂ってる」
「それが企業戦士です。あなた達もそういう人間になりなさい」
「嫌だ」
「うわー」
「もうあんたとは関わらねぇ」
逃げて行ってしまいました。
企業戦士の心得を話していたのに。
「買い取りをお願いします」
辿り着いた買取所で牙と皮を出しました。
「見事な物だ。金貨50枚。いいや55枚かな」
「それで結構です」
おっさんは金持ちになってしまったよ。
そうだ緑の人達にお土産を買っていこう。
露店の串肉を買い占めて、金貨5枚ぐらい使いました。
あの猪の肉を全部食べたのだから、このぐらい平らげるはず。
さあ、夜勤をやります。
金が出来たからといって定時では上がりませんよ。
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