神の仕事スイッチは社畜に絶大なるパワーを与える~社畜は英雄となり伝説となる。その偉業は勘違いから。彼が勘違い気づくのは何時のことだろう~
喰寝丸太
第1話 初出社
「
個人情報が洩れている由々しき事態。
でも、口は挟まない。
目の前の人物はお偉いさんの気配があるからだ。
上司には絶対服従。
これ社畜の掟。
「はい」
今いる所は執務室のようです。
しかし、いつの間にここに来たのでしょう。
覚えがとんとありません。
持ち物もありません。
寝ている間に連れて来られたのに違いない。
「悲しい人生だな」
相手が悲痛な顔をする。
それほど悲しい人生だとは思っていません。
父親は飲んだくれの無職でしたが。
私は大学も出てますし。
職を転々としてますが、すぐに次の職は見つかります。
ただ、すぐに労働基準局が出てきて大抵、会社が潰れます。
「履歴書を読まれたのですか」
「そうだな。履歴を読んだ」
「というとあなたが新しい雇用主ですか」
「そうとも言えるな。これから行く場所は私が管理している場所だ」
「新参者ですが、よろしくお願いします。必ずお役に立ちます。残業、徹夜どんと来いです」
「何か能力の希望はあるかね」
「一つ質問はいいでしょうか」
「なんだ」
「新しい職場はタイムレコーダーがありますでしょうか」
タイムレコーダーとは出勤を管理する機械で、タイムカードという用紙をいれると出勤と退社の時間が印字される。
「ないな」
ガーン、まさかのフレックスタイム制。
これだと生活のリズムが計れないし、残業時間が分からない。
なによりスイッチが入らない。
これは困った。
「なんとかなりませんか」
「うむ、ならんかと言ったら、なるな。私達も出勤は管理されておる」
おー、管理職は時間給なんだな。
下っ端はフレックスと。
「私達が使っている出勤の管理をそなたにも適用してやろう」
「ありがとうございます。管理職待遇ですね」
「付与する能力はタイムレコーダー。他の能力と特典は何も無いがよいか」
「ええ、新しい職場に案内して下さい。今日から働けます」
おや、視界が変わった。
酒場みたいな建物の前にいる。
ほへぇー、いつの間にやらワープが実用化されたのだな。
ウエスタンドアを押して建物に入る。
新しい職場では最初の挨拶が大事。
「キンロウ・ツトムです。今日からお世話になります。よろしくお願いします」
「なんだ。挨拶して入って来た冒険者なんて初めて見たよ。よくみたらおっさんだ。気に入ったぜ。こっちに来い」
貫禄がある男に手招きしてます。
私より若そうですが、腕っぷしは凄そうです。
新しい職場は肉体労働ですか。
これは骨が折れそうです。
ですが、残業すれば問題ないはず。
男に近づき会釈します。
「仕事の手順を教えて頂けるのですね」
「何だ。この歳で新人かよ。まあ良い。教えてやる。まずはカウンターで冒険者に加入だ。次に依頼掲示板で仕事を選ぶ。依頼書をカウンターに持って行くと依頼の始まりだ。後は仕事をこなすだけだ。そして仕事の報告。分からない事はカウンターのねえちゃんに聞けばいい」
「ご親切にどうも」
「良いって事よ。俺はガルダ。困った事があれば相談に乗ってやるぜ。金次第だがな。ガハハハッ」
「では、失礼します」
この建物は銀行みたいなカウンターと受付嬢。
そして、食堂が隣接されている。
仕事に疲れたら食堂で休むのだな。
ミーティングなども食堂で行うのかも。
カウンターに行き声を掛ける。
「お嬢さん、加入したいので手続きをして下さい」
「この歳で新人なんて、変わっているわね。でも規約違反じゃないし、まあいいでしょう。これに記入して」
記入用紙を出されたので見てみます。
ホワッツ、知らない字なのに読める。
睡眠学習ですかね。
そう言えば皆さん外国人のようです。
ワープといい睡眠学習といい、技術の進歩は早いものです。
そうだ、タイムカード押さないと。
そう思ったらタイムカードが手に現れました。
おー、便利ですね。
空気中にナノマシンが散布されているとみた。
ここは現代技術の粋を集めた未来都市に違いありません。
おっさんが技術の進歩に取り残される気持ちが分かります。
タイムレコーダーで記録と思ったらタイムカードに出勤時間が押されました。
初出勤です。
「仕事スイッチ入りましたぁ。みなぎるぅ」
気分の持ちようでこんなに体調に変化があるとは。
受付嬢が変態を見る目で私を見ます。
こういう視線には慣れっこです。
それより、用紙に早く記入しないと、仕事が遅い奴だと思われます。
手早く現地語で記入して提出。
「いいみたいね。それじゃ、魔力を登録するから」
指紋認証の機械が出てきました。
魔力というから指紋ではなくオーラのような物かも知れません。
テレビ番組でオーラを撮影しているのを見ました。
あれの親戚の技術でしょう。
機械に手を置くとタグみたいな物が出てきました。
「Fランクからよ。頑張って」
そう言われてタグを渡されました。
社員証のような物でしょうか。
首から掛けてみます。
これで私も社員です。
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