王道ミステリーの裏側~H氏の探偵解体新書

Yasu\堂廻上山勝縁

 王道ミステリーの裏側~H氏の探偵解体新書

やあ、読者の皆さんこんにちは、私は東京で刑事をしている畠山剛(はたけやまつよし)と言う。


私は剛なんて名がついているからいかつい顔をしているんじゃないかと思うかもしれない。現に某アニメのガキ大将はそうだ。


だがしかし、私は以外にもそこまでいかつい顔をしてはいない。


なので安心してくれると助かる。



さて、この話は作者初のミステリーの作品だ。


作者のこの小説を面白くするために、この脇役の俺がいるということだ。


この小説にはもう少ししたら、名探偵の北条雷翔という人物が出てくる。


雷翔とかいて「らいしょう」って読む。


探偵なのになぜかこいつは髪が黄色っぽく、服は黒のタキシード。そして、いっつも眠たそうな顔で登場してくる。本当にこんな探偵がこの小説の主人公的な存在でいいのか?


まあ、ミステリーと言えばやはり探偵が名推理で謎を解くというのが定番であろう。


英国のシャーロックホームズ大先生などがいい例だ。


ただし、ミステリー作品と言うものは俺から見ればクソだ。


なぜなら、探偵よりも先に真犯人を見つけてはいけないからである。


見つけるのが本来の警察としての仕事と言うことは幼稚園生でも知っている。


だが、それだと小説が面白くもならん。


それが、作者は嫌なんだろう。


そんなもんは赤ん坊でも分かっていることだ。



・・・・いや、さすがにそれはないな。うん。



「警部。雲鳴町で事件です。殺人事件の疑いが…」


おっ、やっと今回の事件に入るみたいだ。さて、名わき役と言うものを精一杯演じさせていただくとしよう。頼むぜ作者さんよ。そして、できれば最後まで読んでくれよ読者の方々。



「嗚呼、分かった。今行く。」




ーーーーーー



場所は雲鳴町という町であった。ここは、川がいくつもある地域で、紅葉に桜がきれいなことでも有名だった。私の友人も行ったことがある。


「・・・被害者は馬輿清子。二十八歳。車を運転している途中に突如、川の方に突っ込んでしまったと、、、、」


はあ、、、よりによって川に突っ込んだっていう設定かぁ、、、作者これ面白くなるん?不安しかないんだが、、、


「・・・で、殺人事件の疑いがあるということは、わざと川の方に落とされたということなのか?」


「ハイ。引き上げた車の内部を調べましたところ。オオスズメバチの死骸発見されました。」


「何?蜂の死骸だと?」


「また、病院からの連絡によりますと、そのオオスズメバチに刺されたことによるアナフィラキシーショックでの死亡の確認が取れております。」


「それのどこが、殺人事件の疑いにつながるんだ?車の中に蜂が入ってきてしまい、不幸にも刺されて運転できなくなってしまったことによる事故になるんじゃないか?」


私がそういうと部下は口を開く。


「実は、被害者はダイイングメッセージのような書き残しをしていたんです。」


「何?ダイイングメッセージだと?」



私がそういうと、部下の一人が袋に入れてあった証拠品を私に渡した。


それを見てみると英語のような文字でDとNとEとRとOの文字と小文字のL。そして、ピリオドのような点が一つついたメモ帳の紙だった。



「これは、、どういう意味だ、、、、?」


「早速、匙を投げるおつもりですか刑事殿?」


「はぁ?そんなことするわけが、、、、って、なんで君がここにいるんだね北条!」



そう、私の目の前にはこの小説の主人公である北条雷翔がいた。


ちなみに、この北条とは実は同じ高校の同級生である。


「何で、、、ですか、、、私は、依頼人のために調査の現時点でのご報告に来たのですが、、、、どうやら、その必要はないようです。」


「何?どういうことかね?」


「実は、依頼人と言うのがさっきあなたが言っていた被害者の馬輿清子さんご本人なんですよ。」



何っ、と私は声を漏らした。


この名探偵北条がいうには、馬輿清子氏にストーカーにあっており、そのストーカーを警察に突き出すための手伝いをしてほしいといわれたらしい。


「なるほど、、、でも、それならば我々警察に言ってくれればいいものを、、、」


「そういったのですが、私でなきゃだめだとか言って聞いてくれませんでした。」


「お前もお前で苦労しているな。まあ、それはともかく、、、、」



私と北条はその時、一時的に小説ではなく、小説外の世界へとワープした。



「・・・今回の作者の事件の構成どう思う?」


「・・・正直言ってダメダメですね。ここからどうやって、盛り上げていくのかすら見当がつきません。」


「・・・そうだよな。まず、虫で刺されて話をどう推理して解くのかの全容をまだ、全然考えてもないのにもう1800文字も書いてしまっているのだから。」


「作者はそういうところがあほですよね。もしかしたら、今回の事件完全に予想外で終わらせるつもりなのでは?」


「まさかな。」



そういうと、北条の顔が驚きの顔になった。



「ん?どうした。」


「いえいえ、何か作者が青ざめた顔をしていたので。」


「えっ、、、それって、、、」


「まあ、とりあえずいったん戻りましょう。しかし、こんな明らかに既視感のある作品なんか作って大丈夫なのやら、、、」


「まあ、オリジナルの要素はちゃんと入れてだから大丈夫じゃないか?」



そんなことを言いながら、私たちは小説の方の現実へと戻った、、、、



ーーーーーーーー



ここで、読者の皆さんが混乱しないように私が容疑者一覧を作ってみた。


まあ、それをもとに推理をしてくれたらこちらとしてもうれしいということだ。



容疑者候補



漆原松子(うるしはら まつこ)・・・被害者と同じ職場だった。(デザイナー)


彼女と会う約束をしていた。年齢は三十二。独身で離婚もしていない。父がスズメバチ退治を今は生業としている。



榊原正則(さかきばら まさのり)・・・近所に住む老人で今年で六十歳ちょうどになる。


今も仕事を続けており、工場の現場監督をしている。被害者とはすぐ隣の家だった。



若場野金次郎(わかばのきんじろう)・・・被害者の元恋人。数学者。被害者と同じ二十八歳。


この地域の近くに住んでいる。事件が起こる二時間前ほどに蟲谷氏と談笑していた。



蟲谷哲郎(むしたにてつろう)・・・虫の研究学者。四十七歳。被害者とは高校時代の同級生。


今日は、ここの近くで山の調査と森の調査をしに来ていた。


若場野とは、大学時代で一緒だった。調査後は二人で談笑していた。



北条雷翔(ほうじょうらいしょう)・・・この小説の主人公で名探偵。年齢は不明。(おそらく三十代)


依頼人が被害者の女性だった。中間報告のために来ていた。



・・とまあ、こんな感じだ。作者も頑張って設定を書いたんだからねぎらってやってくれ。


そして、被害者の馬輿清子(うまこしきよこ)だが、同僚の漆原とデザイナーをしており、スペインやフランス、イギリスなどの欧州での留学歴がある。記憶力がかなり良かったという証言を蟲谷からも聞いている。・・・まあ、そんなことよりもだ。


俺は、直感的に上から四番目の蟲谷哲郎氏を容疑者ではないかと疑った。



「ち、違います!僕はそんなことしませんよぉ!」


「黙れ!オオスズメバチを何らかの方法で車に放ち、そして、わざとアナフィラキシーショックを起こした、、虫の研究者のお前ならできるにちがいない!どう考えてもお前だ!」


「そ、そんな横暴なぁ。」



・・・実のことを言うと、こいつは犯人ではない。いきなり、とんでもないことを言ったが、事実だ。


何故かというと、先に俺が犯人を見つけられるように少なくともこの小説はできてはいない。


さて、では読者の皆さん。よく考えてください。



ーーーーーーーー



「・・・・うーむ。弱った。」


場面は変わる。ここは、一時間前までいた川のすぐ近くでもなく、数分前にいた小さな交番での一時的な取調室でもない。この町の近所の公園だ。風が強く吹いており、子供の姿はどこにもなかった。


あの後に幾度となく蟲谷を問い詰めたが、有力な情報が出てこない。


しかも、逆に蟲谷は自分は被害者の一人だといい始めたのだ。


理由としては、蟲谷は確かに今日の調査でオオスズメバチを三匹ほど、研究のために確保したらしい。


しかし、彼のかばんには何にも入っていなかったのだ。


「虫を奪われたんですよ僕はぁ!!!」


と、大泣きして言われてしまった。しかし、証拠隠滅のために逃がした説も捨てられない。


だが、もしも盗まれたとしたら______


「・・・今回の事件はかなり手ごわいな、、、、できるだけ今日中に片づけたいが、、、、」


そんなこんなで、私がわざと弱音を吐くと、すっと一人の男が公園にやってきた。


「おや、刑事殿。もう、お手上げですか?」


ご存じ北条雷翔だ。


「嗚呼、それでお前は何しに来たんだ?お前も容疑者の一人ではあるんだぞ?お前の情報があっても、尻尾すらもつかめない。」


「それなんですけどね、、、まあ、あとで話しましょう。それよりも、ここの公園に警察の皆さんと容疑者候補の皆さんも集めていただけませんでしょうか?」


「・・・それは、どういうことだ?」


「分かったんですよ。犯人がね、、、、、」



ーーーーーーーー



「しかし、速すぎませんかねぇ?アリバイも全然まだ説明していないのに、もう私犯人が分かったって言っちゃたんですけど、、、」


「そうだな。作者も作者で、とうとう手を抜き始めたんだな。」



私たちは現在、小説外の場所に来ている。


これから、謎を解いてスカッとするシーンなのだが、作者はろくにアリバイもせずに次に行こうとしているので、止めているのだ。


ちなみにアリバイなのだが、漆原はトイレに、榊原は散歩に、若場野と蟲谷は談笑。北条は近くのホテルで謎を解いていたらしい。



「・・・さて、この後お前はどうせ「犯人はあなたです!」と言うんだろ?正直どうなんだ?」


「いや、ぶっちゃけ恥ずかしいですし、嫌ですよ。だって、読者の皆さんも飽き飽きしているでしょう?サンデーで連載中の某名探偵漫画や、じっちゃんの名を誇りに思う少年の話や、クリスティ大先生の小説で飽きるほど見ているじゃないですか!」


SO!RE!NA!


言われてみれば、それをずっと続けていたクリスティ大先生の某名探偵は恥ずかしくなかったのか?



「と、とりあえずは終わらせよう。作者もこれ終わらして早く、アニメを見たり、他の小説書いたり、宿題のレポート書いたりしないといけないんだから、、、、」


「あーもう!作者がうらやましい!どうせあいつ、〇〇見たいだけだろう!!!」




ーーーーーーーー



公園には多くの人々が集まっていた。


警察関係者。警察。容疑者。


その場には、神妙な空気が流れていた。そして、名探偵北条はその中心に足を運んだ。



「皆さん、、、お集まりいただいてありがとうございます。さて今回の事件ですが、実に巧妙な策略を用いていた事件でした。しかし、私は何とかそれを導き出すことに成功しました。」



その言葉にどよめきが起こる。


「なっ、なんだとー!」


「もう!早く言ってよ!」


「き、清子は誰に殺されたんだというんですか!??」



(・・・もはやお決まりのパターンか、、、)


「・・・ふん。どうせ、戯言に決まっているだろう。名探偵と言う名にプレッシャーでも感じて、へたくそな数入りでも言うんだろう。」


私はよくへっぽこ刑事がいいそうな言葉を言い放った。


そして、落ち着いてくださいと北条が言うと、早速、彼は説明を開始した。



「まず、車には被害者の死体とオオスズメバチの死体、、、、そして、謎のダイイングメッセージ。私は、このダイイングメッセージとアリバイをもとに推理を行いました。」


そして、目線をとある人物の方にへと向けた。







「・・・・・犯人はあなたですよね?若場野金次郎さん?」




一斉に目線が若場野にへと集まる。


若場野は「は?俺が?するわけねぇーだろ。」と言いつつも、目が泳いでいた。


「・・・ごまかしても無駄です。あなたは、蟲谷さんと談笑していると話していましたよね、、、?蟲谷さん。あなたは席を外して、トイレに行かれましたよね?」


蟲谷はおろおろとしながらも、「は、はい。」と答える。


そして、北条は続ける。


「若場野さん。あなたは蟲谷さんがトイレに行っている途中に、オオスズメバチを取りましたよね?そして、談笑後にあなたは清子さんに電話をした。そして、清子さんとやり直しをしようとでもいったんでしょう。そして、彼女の車に乗り込み、休憩するとでもいって、行く前にオオスズメバチの入ったカップを気づかれないようにして開けた。そして、清子さんはそのままオオスズメバチに刺されてしまった、、、、突然、蜂が社内に現れたら動揺するのは想像がつきます。刺されて、毒が体に回った清子さんは救急車を呼ぼうとしたが、そのケータイもあなたが何かしらの方法で奪ったのでしょう?そして、ここはご存じの通り、東京の小さな町、、、病院もあまりない、、、、車で行くしか方法はなかった。歩いても間に合うはずがない。だが、意識が朦朧としてそれどころではなかった、、、、」



「だ、だが!証拠がないじゃないか!お前の想像だろそんなの!」


荒々しい口調で若場野は言い張った。


「いいえ。若場野さん証拠ならあります。清子さんは、意識が朦朧とする中で、万が一自分が死んだら、誰が犯人なのかを伝えようとしたのでしょう。オオスズメバチが突然車内に現れたのならば、犯人は当然あなたになります。しかし、意識が朦朧とした状態では若場野さんの名前を書くことさえも難しい。それ以前に、もしかしたらあなたが戻ってきて、メッセージを見つけて消す可能性もある、、、、だから、とある言語で彼女は書いたんですよ、、、スペイン語でね、、、、」



「スペイン語だと?」


刑事の畠山がわざと質問する。これも、脇役の役目の一つだからだ。


「ええ、刑事殿。清子さんは、欧州でスペインなどを訪れていた。しかも、記憶力がかなり良かった、、、、スペイン語が書けていても不思議ではありません。」



そして、北条は畠山にダイイングメッセージを渡すようにいった。畠山は、「少しだけだぞ。」というと、それを渡した。


「・・・これはバラバラになってはいますが、実はスペイン語の単語の一つなのです。これは、[Dinero]。スペイン語で金と言う意味なのです。ちなみにですが、iという文字は、小文字のLとピリオドのような点がくっついてできたものです。刑事殿は分からなかったようですがね。」


「やかましい。」


「金、、、つまり、あなたの名である金次郎を指していることになるんですよ!若場野さん?」



この時点で、若場野の顔が完全に青ざめた。汗を大量に流しており、激しく動揺している。


「で、ですが。犯人の人が私に罪を押しつけている可能性も、、、」


「いいえ。あなたの今持っているカバンを探せばまだあるんですよね?オオスズメバチの残り二匹と、清子さんのスマホ。そして、あなたのスマホにある電話記録が、、、先ほどからカバンを隠しているのは、そうだからですよね?」


「・・・!?・・・・」



若場野は絶望し、口を開いたまま愕然としていた。


開いた口が塞がらないとはまさしくこの事であろう。


しばしの沈黙が過ぎ去った後、ガクリと頭を垂れて足を地に着いた。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁかぁぁぁぁ!」



そして、若場野は逃走した。


否、逃走しようとしたといった方が正しい。


なぜなら、逃走の瞬間に私がすぐさま押さえつけて、手錠をかけたからだ。


若場野は必死にもがいているが、無駄なあがきにしか過ぎない。


こうして、あっさりと事件は解決した。



ーーーーーー



「いやー。さすがは名探偵北条だ。感心したぞ。」


「そう言ってもらえてうれしく思いますよ刑事殿。」



事件後、私と北条は東京渋谷のとある喫茶店に来ていた。


あの後の事情聴取で、若場野がどれほどクズな男かがよく分かったのだ。


彼は彼女に振られたことが信じられずに、ストーカー行為を繰り返し、挙句の果てに事故に見せかけて殺そうとするというひどすぎる男だったからだ。



「しかし、思うのだが、、、」


「何でしょうか?刑事殿?」


「いや、どうして被害者の清子さんは日本語かかなかっ、、、」


「それを言ったらおしまいです!推理小説ではなくなってしまいますよ!」



あっ、そうか。これは失敬。


私としたことが、これでは脇役失敗だな。やれやれ・・・


そもそもこの小説は、タイトル通り、裏側を出す小説なんだからなぁ、、、、、、


私はそう思い、ライターを取り出して、タバコに火をつけた。



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