６畳間のお姫さま

７

　そのお姫（ひめ）さまは、大（だい）好（す）きなお母（かあ）さんとお父（とう）さん、そして、愛犬（あいけん）のモモと一緒（いっしょ）に、夢（ゆめ）の中（なか）でしあわせに暮（く）らしておりました。

　それは、とても長（なが）い夢（ゆめ）でしたが、とてもしあわせな夢（ゆめ）でもありました。

　その夢（ゆめ）の中（なか）では、お姫（ひめ）さまはずっと笑顔（えがお）です。

　その夢（ゆめ）の中（なか）では、クラスメイトに片親（かたおや）だと馬鹿（ばか）にされたり、陰湿（いんしつ）ないじめをされる事（こと）もありません。それに、お母（かあ）さんとお父（とう）さんの仲（なか）を切（き）り裂（さ）く邪魔（じゃま）な女（おんな）も赤（あか）ん坊（ぼう）もいません。

　その夢（ゆめ）の中（なか）では、お姫（ひめ）さまは家族（かぞく）みんなと笑顔（えがお）でお花畑（はなばたけ）の中（なか）にある遊園地（ゆうえんち）に遊（あそ）びに行（い）ったり、愛犬（あいけん）のモモと青空（あおぞら）を飛（と）び、白（しろ）くてフワフワな雲（くも）の上（うえ）にあるお城（しろ）に行（い）ったりして遊（あそ）ぶのです。それは、とても楽（たの）しくて、素敵（すてき）な夢（ゆめ）なのです。

「お父（とう）さ―ん！　お母（かあ）さーん！」

　空（そら）から元気（げんき）に手（て）を振（ふ）れば、地上（ちじょう）のふたりは、笑顔（えがお）で手（て）を振（ふ）り返（かえ）してくれます。お姫（ひめ）さまもさらに笑顔（えがお）になって、大（おお）きく手（て）を振（ふ）って応（こた）えました。

　お姫（ひめ）さまはその夢（ゆめ）の中（なか）で、いつまでもずっと、永遠（えいえん）にしあわせに暮（く）らしました。

　ずっと、ずっと……

　いつまでも、永遠（えいえん）に……

　おしまい。