永遠の眠り姫

 夫と別れてから、もう二年が過ぎた。

 女手ひとつで、ひとり娘を育ててきた。

 なによりも大切に大切に、大切に育ててきた。

 娘は、離婚直後から笑う回数が減って、やがては不登校になり、外出や部屋から出る事すらしなくなっていた。

 ただ、最近は進学する予定だった私立中学校の制服を着ているようで、彼女なりに引きこもりから抜け出す努力をしているようだった。


 わたし自身も娘と生きるため、仕事に忙殺される日々を送っていた。

 もう恋はしないで、娘のためだけに生きようと決めていた。決めていたが……決めていたのだが……仕事先の男性に、心惹かれてしまった。

 やがて、男女の関係になり、相手は全てを受け入れてくれると言った。本当に嬉しかった。

「結婚しよう」と、婚姻届けを見せられた時、はじめはなにかの冗談かと思ったけれど、真剣な眼差しに彼の本気を感じた。


 悩みに悩んだ末、再婚を決意したものの、愛娘には交際している事さえ伝えてはいなかった。話すタイミングを失っていたのだ。

 離婚した直後、これからは二人で頑張って生きようと話してはいたが、結婚を決意した今、すべてを話さない訳にはいかなかった。


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