クローゼットなかには、1匹いっぴき化物バケモノひざかかえてすわりんでいました。その化物バケモノかお上半分うえはんぶんうつくしい女性じょせいで、のこりの下半分したはんぶんみにくくておおきなくちからは、したたちたけた蝋燭ろうそくのようにかたまっていました。


 おひめさまは、こおりのようにつめたい表情ひょうじょうでその化物バケモノ見下みおろします。化物バケモノのほうはひどおびえた様子ようすで、相変あいかわらず獲物えもの咀嚼そしゃくするようなおとはっしています。


 化物バケモノかみ躊躇ためらいなく鷲掴わしづかみにしたおひめさまは、やはりつめたい表情ひょうじょうのまま、部屋へや中央ちゅうおうへと無理矢理むりやりきずりしました。


 いたがる化物バケモノは、なおもまだ不快ふかい咀嚼音そしゃくおんはっしています。おひめさまが化物バケモノあたまゆかたたきつけてつよみつけると、化物バケモノひくうねごえげてやっと大人おとなしくなりました。


ぞこないが。わる足掻あがきしやがって」


 おひめさまは、ブツブツとひとごとをつぶやきます。



 おびえきった目玉めだまでおひめさまを見上みあげる化物バケモノは、「ひゃめて、もうひゃめて」と、きゅうこえげました。



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