６畳間のお姫さま

３

　静（しず）けさの中（なか）、お姫（ひめ）さまのお腹（なか）の音（おと）が、６畳間（ろくじょうま）の領土（りょうど）全体（ぜんたい）にかわいらしく鳴（な）り響（ひび）きました。だいぶと食事（しょくじ）の時間（じかん）が過（す）ぎていたのです。

　さすがに寛大（かんだい）なお姫（ひめ）さまも、強（つよ）い苛立（いらだ）ちを隠（かく）せません。きょうの今（いま）まで、食事（しょくじ）の時間（じかん）が遅（おく）れたことはありませんでした。意図的（いとてき）に、お姫（ひめ）さまから食事（しょくじ）を取（と）らなかったことは何度（なんど）もありましたが、その逆（ぎゃく）はあり得（え）なかったのです。

　ドアの前（まえ）に立（た）っては、椅子（いす）にすわる。ドアの前（まえ）に立（た）っては、椅子（いす）にすわる。お姫（ひめ）さまは何度（なんど）かそれを繰（く）り返（かえ）し、ついには、憤怒（ふんど）の表情（ひょうじょう）を浮（う）かべて、白（しろ）いふわふわのベッドへ腰（こし）をドスンと下（お）ろしました。

　考（かんが）えてみれば、昨夜（さくや）からお母（かあ）さんが家事（かじ）をしている様子（ようす）はなく、１階（いっかい）からなんの物音（ものおと）も聞（き）こえてはきません。もしかしたら、どこか遠（とお）くへお買（か）い物（もの）にでも出（で）かけたのでしょうか？

　でも、過保護（かほご）のお母（かあ）さんに限（かぎ）って、なにも言（い）わずに外（そと）へ出（で）かけることなんてあり得（え）ません。お姫（ひめ）さまは仕方（しかた）なくベッドへ横（よこ）たわると、もう少（すこ）しだけ待（ま）つことにしました。