お姫さまの嗜み

 そんなあるのことです。ねむりから目覚めざめたおひめさまは、しろいふわふわのベッドからのんびりりて、ほそくて綺麗きれい素足すあし桃色ももいろ絨毯じゅうたんけました。


 まだねむたそうにしてをこすりながらあたりを見渡みわたすと、きょうも室内しつないは、なにもわらない景色けしきでした。まど花柄はながら遮光しゃこうカーテンと純白じゅんぱくのレースカーテンにおおわれていて、そと世界せかいからのひかりざされています。まさに、遮断しゃだんされておりました。


 おひめさまはだれわれるでもなく、そっとがってから部屋へや中央ちゅうおうまであるき、スルリと、優雅ゆうがにパジャマをはじめます。


 なにせ、おひめさまです。寝巻ねま姿すがたのままでは、はしたないのです。ただ、いだパジャマをベッドにてるので、はしたないことにはわりありませんでしたが……


 パジャマをえたら、つぎ部屋着へやぎ着替きがえます。しろいクロスのかべけてある、私立しりつ中学校ちゅうがっこうのセーラーふくへと着替きがえるのです。


 もちろん、おひめさまは中学校ちゅうがっこうったことなどありません。不服ふふくでしたが、おひめさまは自分じぶんつよ意思いしかないのです。でも、ないでいるとセーラーふくがかわいそうなので、せめてもとおもい、この学生服がくせいふくをおひめさまである自分じぶん部屋着へやぎとしていました。


 着替きがえをませれば、今度こんど姿見すがたみまえで、こしまでびている黒髪くろかみ丁寧ていねいにおりのヘアブラシでととのえます。そのヘアブラシは、いまとおはなれてらしているおとうさんがってくれたもので、大好だいすきないぬのキャラクターがえがかれていました。


 何度なんど何度なんども、納得なっとくがいくまで丁寧ていねいかみをとかしたおひめさまは、それから勉強机べんきょうづくえかいます。


 それは、きのうとおなじく、日記にっきつづるためでした。


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