第67話

「さあ、魔王を倒す大冒険に出発だ!」

「はい!」

 トルカを出、次の街へと続く道を進む彼。そのあとを私とミツルさんは追う。


 私は見上げた。

 綺麗な青空に、燦々と輝く太陽が目の前に広がる。

 本日は晴天なり。これもまた神様の思し召し。


「魔王を倒す大冒険って……」

 隣のミツルさんは私を見る。

「いいじゃないですか」

「いや、だって……」

 彼女は言いづらそうに私を見てから、目を背けました。

「たどり着けるわけないじゃん……」

「いいじゃないですか」

「えぇ……」


 だって、と私は唇をほころばせ、

「それなら、ずっとずーっと、皆で冒険ができるんですよ!」

 ミツルさんは驚いたような、呆れたような顔をしました。

「ははは……」

 乾いた笑いです。

「アータにゃ負けるよ。そんならまあ――置き去りにならないように、しっかりついていきなよ」

「はい!」


 肩をすくめて、彼女は彼を追いかけはじめた。そばの茂みが揺れて、赤い頭が見え隠れしている。どうやら私の後を追うつもりらしい。彼は道中でちょくちょく遭遇していたようだ。


 私はキュッと胸に杖を抱え、走り出そうとする。

 そこでふと。

 振り返り、私が住んでいた――両親とともに過ごした家の方を見た。


 お父さん、お母さん。

 私は今、幸せです。

 生きていて、よかったです。


 それだけ告げて、私は前を向く。

「行こう!」

 先を行く彼が差し出す手を取り、私は日の光を浴びて進む。


 この輝きの中を、ここから始まる冒険を、

 紡いでいく。

 それが私と勇者様の物語。

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