第47話

 ローブに身を包んだ少女は処刑台に上がり、しゃがみこんだ。

 そこは、その部分だけは、石造りの灰色とは違って赤黒かった。

 つまりは爆心地、ここで処刑が行われ血が流れ続けたわけだ。

 当然、こいつの両親もここで。


「ここで死んだやつはさ」

 つい、口が滑った。

「みんな悪いやつだったのかな」

 そうとしか思えないくらい、自然に出てきた言葉だった。


「そんなことはありません」

 小さいが、しっかりした声が返ってきた。

「そうは、思いたくないんです」

 凛とした視線で見上げられた俺はうなずいた。

「そうだな」


 今更ながら、気づいた。

 ――――『そこになら、きっと私の求める答えがあるはずなんです』

 彼女が求める答えとは、きっと。

「俺もそう思う」



『それではこちらに教徒番号を……お二人様はトモノヒ教徒ではないのですか。それではお断りします』

 …………。

『は? うちは異教徒お断りだよ帰ってくれ』

 ……………。

『とっとと失せろ。警備兵に突き出すぞ』

 …………。

 …………。

 …………。

「ぜ~んぜっんだーめじゃん」

 ぜえぜえ息を吐いてミツルがうめく。宿泊を断れたどころか通報された宿屋から路地裏まで逃げてきた俺たち。これで何件目だったか。馬車のおっさんの言う通りどころか、それ以上にひどい。人間扱い以前に害虫扱いだ。


 まさか宿屋・武器屋・道具屋。冒険家の三大施設ぜんぶ使用できないとは。ああ、クソ。久しぶりに全力疾走したからわき腹が。

 しかたない……

「ここを宿泊地とする」

「ふざけんな」

 俺は慌ててしゃがむ。一瞬後、俺の頭があった場所にゴルフクラブが通り、壁と派手にぶつかって火花が散った。あぶねえな。


「ここで寝るとかそれこそ人間じゃねーよ」

「お前ストリートチルドレンの皆さんに謝れ」

 たしかにここは汚い路地裏だ。薄暗いしジメジメしてるしなんかやばそうな虫も鼠もちらほらいる。でも言うじゃないか。住めば都だって。きれいなシートや天幕を張れば、きっと住みやすい環境に。


「あー、君たち」

 この糞ギャルがギャアギャア騒いだせいか、一人の兵士がやってきた。なんというか、いかにも警備員ですみたいな見た目。


「どうかしたのかな」

 やべえ。職質だ。前世でも食らったけど、これこっち悪くないのにネチネチ因縁つけてくるやつだ。胸糞わりぃ。くそっ。なんだよこの強制エンカウント。イベントバトルか?


「ええと、その……」

 俺は周りをキョロキョロする。どうする。やるしかないのか。なんでこんなことに。この糞ギャルのせいだ。糞ギャルが悪いんだよ……

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