#16 寮に戻って。


「ねえねえ!佐久間君、今日はどこに行ってたの〜?」

「朝早くから出かけたって聞いて〜」


 夕食の時間、寮の食堂で僕は女子生徒達から質問を受けていた。


「どこ行ってたの〜?買い物とかぁ〜?」


「服とかぁ?都内まで行ったの?」


 買い物に服、うーんやっぱり女の子はいつの時代も好きなんだなあ。あとは甘いものとか…、だけど同時にダイエットの話題をしてたりするし…そのへんがよく分からない。


「あ、いえ。鴻巣こうのすに行ってました」


「鴻巣ぅ〜?あそこなんかあったっけ〜?」


「わかんな〜い。佐久間君、何しに行ったの〜?」


 マジですか…。僕は鴻巣って聞くと免許がらみの場所ってイメージなんだけど…。そんな気持ちを抑えて僕は女子生徒達からの質問に応じる。


「実は鴻巣に行ったのは免許試験を受けに行く為だったんです」


「免許?」

「あれって十八歳じゅーはちからじゃなかったっけ?」


「それは四輪クルマですね、僕が行ったのは自動二輪バイクの免許でして…。これは十六歳じゅうろくから受験できるんです」


「えっ?じゃあ免許試験に?」

「ど、どうだったの?」


「無事、合格してました」


 わああああっ!!!食堂内が一気に沸いた。えっ、いつからこんなに人がいたの?


「マジで!?」

「おめでとー!!」


 いる人いる人、口々に祝福の言葉が僕に向かって投げかけられる。


「あ、ありがとうございます!」


 僕は思わず立ち上がり頭を下げた。


「…でさ、佐久間君」


 すすす…。左隣に座っていた先輩の女子生徒が椅子ごと距離をつめながら声をかけてきた。


「あ…。は、はい、免許の事ですか?」


「ううん。ち、が、う!」


「そーそー。違う違う〜」


 すすす…。反対側、右側に座っていた女子生徒も近づいてきた。


「えっ?えっ?」


 なんだ?なんだ?急に女の子達が距離をつめて来たぞ。


「佐久間君さぁ…、十六歳じゅーろくなんだよね?」


 『きらーん』という効果音がつきそうな表情で僕を見つめてくる先輩。なんだかとても眼力めぢからが強い。


「は、はい」


 勢いと言うか迫力と言うか…、色々なモノに負け僕はすっかり雰囲気に飲まれてしまう。そして気づけば周りに女子生徒達が集結してきている感じがする、それもいつもより距離感かなり近めで。


 戸惑う僕をよそに両隣の先輩はさらにグイグイ距離をつめてくる。右隣の先輩が至近距離と言える間合いに入った、風呂上りなのだろうか良い匂いがする。これは…アレか!?香らせるタイプのシャンプーか、結構昔からある商品らしいが根強い人気を誇るらしい。その香りで男心をくすぐってくる先輩が口を開く。


「つまりさあ、それって…」


 いったん言葉を切って先輩は間を取る。そしてやおら口を開く、驚いた事に反対側の先輩も同時に口を開いた。


「「結婚可能けっこんできるって事じゃん!!」」


 二人の先輩による今日一番力のこもった言葉だった。

 


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