隣の美少女パイロット~アナタをロボットで守ります~
MrR
護衛対象の秘密
Side フィオナ・フローレンス
中東某所。
とんでもなく熱くて水気がない不毛の荒野のど真ん中にある武装勢力の駐屯地にて。
全高八mの人型機動兵器「ライドデバイサー」。
白とルージュのカラーリング。
横長のカメラアイ。
頭部側面の羽根飾りのようなパーツ。
細心のフォルム。
両肩のシールド。
手に持った銃器。
それが私が乗るライドデバイサー、バルキリーの姿。
仲間達と輸送機から空挺降下し、次々と目標を排除していく。
私達、アルテシア王国は時偶同盟国の救援に向かっては武装勢力を排除している。
今回もその任務の一環。
敵のライドデバイサー、ソ連製のヴォイン(戦士の意味)。
一つ目で無骨なフォルムでデザートカラーの、とにかく整備性が良く、ライドデバイサー界のAKー47と言われる程の傑作機だ。
私も訓練生時代に乗った事がある。
だがバルキリ―とヴォインとでは性能に差がありすぎる。
ヒラリと相手の攻撃を回避し、銃弾を叩き込んでゆく。
戦闘はあっと言う間に終わった。
☆
「とまあ、母国にいた頃はそんな風に活動していたんです」
護衛対象の紺野 カズハの食事にご馳走になりながらそんな昔話をしていた。
日本の食事はやはり上手い。
ここは紺野 カズハの家。
家族ぐるみの付き合いで私が軍人として優秀と言う評価もあったので、こうして紺野 カズハの護衛任務についている。
多少改築したり、近くの土地を買い取ったり、外交ルートで圧力掛けたりして近所に私のライドデバイサーを待機させてある。
またサポート要員も近所で待機済みだ。
その事を知ってかしらずか「ハァ」と溜息をついた。
「まあ信じるしかないよね・・・・・・日本でデバイサーに襲われるなんて考えもしなかったし」
「そうですね。私も正直、バルキリーを持ち込むのはやり過ぎかなと思いましたが正解でした」
初めて会った時の話だ。
初っ端からライドデバイサーを動員してまでカズハを拉致しようとした時は私も驚いた。
勿論テレビもネットもその話題で持ちきりとなって今でも話題になる。
「それにしても僕ってなんなんだろう? 両親が関係してるんだよね?」
「私の国の重役なんですよね。その関係で狙われているんですよ」
「はあ・・・・・・大変な両親持っちゃったな」
と済ませる辺り、彼は大物なんじゃないかなと思った。
☆
Side 紺野 カズハ
フィオナ・フローレンス。
ピンク髪を三つ編みにして束ねたヘアースタイル。
女騎士のような凛々しい顔立ち。とても同年代とは思えない。
体もスポーツマンのように鍛え込まれていて胸も大きい。
背もありスタイル抜群。
現代版アマゾネスと言った感じだ。
口調は厳しく感じる時はあるが優しい性格だ。
まあ融通が利かない時があるのはタマに傷だが。
この前、ガラの悪い人達に絡まれた時もアクション映画のワンシーンみたいに片付けちゃったし。
幼い頃の彼女の可愛らしい面影は残ってはいるがもはや別人である。
☆
Side フィオナ・フローレンス
護衛と言っても一日中付き纏うワケではない。
例えば学校などがそうだ。
男女別などで教科が別れていたりとか、男女の壁とかもある。
高校生ぐらいの歳になると男女の壁は目に見えず、とても分厚い物だと聞いている。
親しく会話しているだけで目立つ。
同姓で同い年の工作員を用意出来れば良かったが同じ時期や短い期間に転入生を送り込むのは不自然だ。
学園の外部にスタンバイさせて置くのが限界である。
例えば学園近くの敷地を購入して完全武装の部隊やステルス装備のライドデバイサーをスタンバイさせて置くとか。
だがどんなに入念に準備してもトラブルはつきものだ。
例えば拉致されたとか。
☆
紺野 カズハには発信器を複数をつけている。
囮用の比較的見つけやすい発信器。
そして本命の発信器。
周辺の土地の隠れ家にしやすい土地などの位置も叩き込んでいるのだが――
☆
日本・とある港にて。
(まさかまたライドデバイサーを投入してくるなんて――)
本当に紺野 カズハはただの我が母国の重役の息子なのだろうか?
それにしては戦力が過剰な気もする。
タンカーから複数のライドデバイサーや戦闘ヘリ、戦車などの機甲兵器が出現する。
巧妙偽装されているが相手の国はオリオス国。
我が母国、アルテシアと因縁がある国だ。
昔は仲が良かったらしいが時代の流れで今のような関係になってしまった。
(敵の数が多い!!)
私が乗るバルキリ―はアニメに出て来るようなヒーローロボットではない。
動力は規格外だが、戦車や戦闘機にすら負けるリアルロボットだ。
数は減らしているが――
(増援!?)
と、ここで何処からともなく発砲音。
敵が爆散していく。
『こちら騎兵隊。プリンセスはプリンスを救出に迎え』
「了解」
騎兵隊は増援。
プリンセスは私。
プリンスは紺野 カズハだ。
私は味方の援護を受けてカズハの救出に向かう。
☆
タンカー内部の広い一室。
激しい銃撃戦を潜り抜け、味方の援護を受けて遂に紺野 カズハを見つけた。
傍には白衣を着た金髪の白人――メガネを掛けている。
背もあり体格も観た感じいい。
ただの非力な研究者だと思うと痛い目を見るかもしれない。
それよりもカズハだ。
妙な機械に繋がれていて台に寝そべられている。
「カズハを返してもらう」
「良いだろう。実験は成功した」
「え?」
呆気にとられた。
「どう言うことだ?」
「君達は紺野 カズハの価値を分かってはいない」
金髪の白人そう言って視線を向ける。
そこには見たこともない品の数々――剣やSF銃、パワードスーツの類いらしき物までも置かれていた。
「カズハはゲートの力。異世界へと渡る門を開く事が出来る――と言えば分かるかな?」
「・・・・・・それをご両親は?」
「この事は極一部の人間しか知らない。知られればアルテシアとオリオスだけの問題では収まらないからだ――」
「それを信じろと?」
「では聞くがどうして日本で学生生活をさせているんだ? 本当に守りたいなら態々高い金を払って日本で守らなくてもアルテシアで保護すればいい」
「それは――」
「それに学校に潜り込ませる工作員はどうして君だったんだ? 言っては悪いが君は目立つ、他にも候補は幾らでもいるだろう?」
「・・・・・・」
確かに言わんとしている事は分かる。
色々と合点が言った部分も多い。
要するにカズハのご両親はアルテシアも信用してなかったと言う事だろう。
だから幼い頃から付き合いがある私を護衛につけたのだ。
だが――
「それが例え真実だとしてもカズハは返して貰う」
☆
私は上層部に何も話さなかった。
カズハの人体実験で得たらしい物は全部、出来うる限りぶっ壊した。
あの科学者が「やめろ!?」と制止したが止めなかった。
それに関しても上層部は何も聞かなかった。
上も気づいているのだろう。
それよりも私はカズハの秘密を知ってしまった――最悪母国を敵に回す事になるかもしれない。
どうにか出来ない物かと考えるが良い案思いつかない。
出来るすれば護衛の任務を全うするぐらいだ。
☆
Side 紺野 カズハ
二度目の拉致。
意識が朦朧としていたが、僕にはとんでもない力があったらしい。
異世界へのゲートを作る力。
その力を利用して様々な物を手に入れていた。
フィオナもその事を知ったらしい。
彼女は――不思議と傍でとても優しく抱きついて寝てくれた。
「何があってもアナタを守ります」
「例えそれが母国を裏切る事になっても――」
と。
恐怖の気持ちと恥ずかしい気持ちとかがごちゃまぜになって僕は泣いた。
☆
そして日常に戻る。
以前に比べてフィオナは優しくなった気がする。
僕も親しく会話できるようになった。
この先どうなるかは分からない。
けれども、フィオナが一緒なら乗り越えられる。
そんな気がした。
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