両想い
卒業式を終えた翌日、私は感慨に耽りながら黒板一面に書かれた
卒業生を受け持つのは初めてで、
幸いにして仲の良いクラスであったから、卒業を前にほとんど授業に使われることのなかった黒板が、いつの間にか広い
可愛い手書きのキャラクターや、熱い
良い子たちだった。もうこの教室で会えないのが、寂しくてたまらない。胸が締め付けられる。
時間をかけて大半を消し終え、椅子の上に乗って自分の身長では届かない高い位置の落書きに手を出した。
隅の方に、小さな文字で「先生のことが好きでした」と言う言葉を見つけた。
私の心臓がきゅんと鳴いた。
なんと、なんとなんとなんと! なんということか!!
それからその文字をまじまじと見て、誰の筆跡かを思い出そうとした。
しかし分からない。黒板にチョークの筆跡は、ノートにシャープペンシルのものと異なり、その個性を打ち消している。
誰なのだろうと考えた。初めのうちはクラスで人気者だった男子生徒の顔が浮かんだ。
けれど結局、順繰りに女子生徒も含めて全員の顔が頭に浮かんでいた。
ふっと、肩の力が抜け、口元が自然と微笑んだ。
黒板に残された文字の下に、『先生も好きでした』と書いた。
そしてそれを写真に残し、黒板消しで静かにすべてを消し去った。
誰もいない教室はとても静かで、吹き込む風が私の髪をそっと撫でた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます