御等野亜紀短編集2
御等野亜紀
特別じゃない空
夏の期間
雲のない日は多くない
別にどんよりした雲が立ち上るわけではないが
夏の入道雲は致し方ないだろう
朝早起きをすると
そんな雲のない時間帯に出くわすことがある
私の住む場所は山国で
地平線が見えない
だからこそ見える朝の風景かもしれない
夜の間に冷やされた空気は
これから始まる1日の活力をくれる
一日の間に10度以上変化するのだが
慣れてしまえば
ただ暑苦しいだけの都会より
何倍も過ごしやすいと思う
何よりも空気がおいしい
「ラミィは空を眺めるのが好きね」
そう、声かけられて
声の主に振り向く
近所で毎日ランニングを欠かさないホフィナさん
顔合わせの常連だ
ちょっと空に夢中になりすぎて朝の挨拶に気づかなかったぽい私
「澄んだ空はなによりも尊く感じるから
それを余すことなく感じられるって幸せじゃない?」
「確かにねー。この空気が無ければ私も走ろうなんて思わないかもしれない」
同意に満足する私
「でも上向いてなくても太陽の光も空の空気も包み込んでくれるから、上みすぎてこけない様にね」
肩をぽんと叩いて走って行ってしまう
確かに上を向く必要はない
なんか変な癖がついている
理由は知ってる
「ママはあのお空の上を飛んでくる飛行機に乗って戻ってくるから、ちゃんと見ててね」
でもママは帰らなかった、パパも
旅行先の飛行機墜落・・・珍しくもないが
身内が遭遇するのは珍しいか?
そしてこの田舎に連れられてきて
おじーちゃん、おばーちゃんに育てられた
子供のころは死の意味が理解できなくて
ママとパパの帰りを空を見上げて待ってた
その頃についた癖である
空は薄く青い
どこまでも広く
そしてどこまでも続いてる
独り占めしたいけど
それだけはかなわぬ夢
空はみんなのものなのだから
息をすーっと吸い込む
でも天気のいい日ばかりとは限らない
都会では朝でもこんなすがすがしい空気は吸えない
今日だけの、この土地の朝だけの特別な贅沢
今日も元気で居よう
笑って居よう
そしたら、少しだけ人より幸せになれる
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