きみの笑顔が離れない
@touka39
彼との出会い
私の名前は友子。
シングルファーザーの父とロサンゼルスで二人で暮らしをしている。
父は私の事をとても大切にしてくれているし、私も父の事が大好きだ。
父のことはジョニーと名前で呼んでいて、今日も街で待ち合わせをしている。
車が現れ、乗り込むといつもの運転手とは違う人がいて
「あれ?いつものステイシーは?」と聞くと、
運転手は、
「今日はいない」と答え、何故か後部座席にも見知らぬスーツ姿の男が座っていた。
(はぁ。。。またか)心の中でそう思った。
というのもこれは、誘拐だなと気付いたからだ。私の父は、ヤクザ?のような組織と対峙している組織のトップをしているようで、そのせいで私は今までに何度も誘拐されたことがあった。
父の組織が善か悪かも分からなくて、何をしている組織なのかも知らないけど、言えることは、とてつもなく迷惑ということだ。
車は急発進しロサンゼルスの街を駆け抜けていく。
「ジョニーの運転の方が上手いわ」
と父の話をするくらいには、私の心には余裕があった。何故なら、今まで何度も誘拐されてきたけど、一度も手を出された事がなかったからだ。
相手の組織は、父を困らせたいだけなのかもと私は薄々思っていた。
窓の外を見ていると、物乞いらしき人がクレジットカードを見せながら、100ドル貸してくださいと日本語で言っているのが見えた。
どうしたんだろう?と思っているうちに、車はその場を通り過ぎてしまった。
運転席と助手席にある肘掛けに何ドルか挟んであるのが見え、
私は咄嗟に
「このお金借りていい!?!?」
と聞いた。
は!?みたいな顔をされたので、
「さっきの人に渡したいの!」
とお願いし、車から駆け降りた。
けどその人はもういなくなっていて、
その代わりにそこには看板が立ててあり、何かの試験会場のようだった。
すでに試験は始まりそうで、私は会場に飛び込んだ。
汗をダラダラ流しながら、机で頭を抱えている人を見つけ、さっきの彼だ!と思い急いで駆け寄った。彼に100ドルを渡し、グッドラックの指を立ててエールを送った。
彼は一瞬何が起こったか分からないようだったけど、すぐに察してくれたのか泣きながらグッドラックのポーズを返してくれた。
事情は分からないけど。きっと試験のお金を無くしちゃったのかな〜と思いながら、会場を出ると運転手が怒った様子で待っていた。
でも、私は嬉しくてたまらなかったから
「ありがとう」と彼に伝えた。
その瞬間だった。
その怖い顔には似合わないクシャッとした笑顔が彼の顔に浮かんだのは。
あ、この笑顔知ってる。
少し寂しそうに笑うんだよね。
私の大好きな人と同じ顔だ。
思わず、「大好き!」と彼にハグしてしまった。
続く
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