第8話
「もう、わたくしから解放してあげるわ。長い間、ごめんなさいね」
わたくしの言葉に、目を見開く小鳥さん達。
「わたし達を捨てるのかっ!?」
「わたし達は要らない、ですか?」
「いいえ。あなた達に、わたくしが必要無いの」
長い間、わたくしが縛り付け、その自由を奪ってしまった可愛い可愛い小鳥さん達。
いつもいつも追い詰められて、ギリギリの精神状態だった幼いわたくしに子守唄を歌ってくれて、安らぎを教えてくれて、つんとした態度を取りながも、わたくしのことを心配してくれた小鳥さん達。
あなた達二人がいなかったら、わたくしはとうの昔に潰れてしまっていたことでしょう。
これまで、わたくしの心を守ってくれてありがとう。愛しているわ、小鳥さん達。
愛しているの。愛して、いるから・・・
だから、どうかもう・・・
「わたくしから、自由になって?」
「・・・本当に、自由にしていいんだな?」
じっと、わたくしを見据える小鳥さん。
「ええ。その、国籍を取得するまでは一緒にいてもらうことになるけれど・・・それまでは、我慢してちょうだいね? その後は、ちゃんと手を放すから」
「ったくもうっ!? この、手の掛かるアホアホお嬢さまはっ!?」
「へ?」
「アンタはっ、わたしが歌わないと情緒不安定で夜も眠れないだろうがっ!?」
「そ、それは・・・」
「わたしがお手伝いしないと、お着替えもできない、です」
「ぅ……そ、それは、その、ドレスだったからです。もっと簡単なお洋服なら、ちゃんと自分で着替えられるもの」
「買い物は? 食事の用意は? 掃除や洗濯は?」
「え? え~と?」
「どれも全部、やったことなんかねぇだろ? アンタは生粋のお嬢さまだからな。そんなアンタが、一人で生きて行けんのか?」
ふん、とわたくしを鼻で笑う小鳥さん。
「ど、どうにかしますわ」
「そうかよ? で、アンタは独りになって、わたし達に自由をくれるってワケ?」
「ええ。あなた達二人の自由は、保障します。少ないですが、お金も持たせます」
「それなら、今まで通り面倒見てやるよ。な?」
「うん」
二人して顔を見合わせる小鳥さん達。
「え? あの?」
「自由にしていいってんなら、そうさせてもらう。文句は言わせねぇ。大体な、一人でなんっにもできねぇ上、わたしが歌わねぇといつまでも眠れない、そんな手の掛かるアンタを一人になんかできっかよ?」
「そんな、わ、わたくしだって頑張れば、どうにか……それに、一人だって、あなたの子守唄が無くったって眠れるようになります!」
そうじゃないと、いけないの。
「あーも-ウルサいなっ! わたしがっ……いや、俺がアンタを放っとけないんだよ! いいから黙って俺の傍にいろ! アンタとコイツの二人くらい、俺が面倒見てやるから!」
「え?」
「つか、そろそろ女装もキツくなって来てたし、あのままあの屋敷にいたら、声の維持の為、危うく
「??」
「
「おう。そんな涙ぐましい努力も、全部アンタの傍にいる為だったんだが・・・それももう、必要無ぇ。身長だって直ぐに追い抜いてやる。せいぜい覚悟してろよ?」
低い声でニヤリと笑った小鳥さんが、わたくしへ顔を近付け・・・
「なぁ、お嬢さま」
「っ!?」
ふっ、と柔らかい熱がわたくしの唇を掠めました。
「王子サマが、他の連中が要らねぇってんなら、俺がアンタを貰ってやる」
と、こうしてわたくしは、
まさか、わたくしの小鳥さんが、男の子だったなんて・・・全く知りませんでしたし、思ってもみませんでしたわっ!?
――おしまい――
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