第一部 ある少女の独白2

【ある少女の独白2】


 この病院に来て、久しぶりに声を掛けてくれる人に出会いました。

 その人は子供みたいな無邪気な笑顔で話しかけてきました。

 この病院の看護婦さんで名前は新谷春花さん。

 私が知らんぷりをしてもその人は笑顔で話しかけてきました。

『やっほー、美月ちゃん♪』

『いい天気だねぇ~美月ちゃん』

『タマネギ残しちゃダメよ。美月ちゃん』

『おやすみ美月ちゃん。いい夢が見れるといいね~』

 その人に『美月ちゃん』と呼ばれることで、

 私は自分が『美月』という名前であることを思い出しました。

 名前を呼ばれたのなんていつ以来でしょう。

 自分を壊そうとした先に辿り着いた病院で、

 私はあれほどまでに切望していた人に巡り逢ったのです。

 でも……遅すぎました。私はもう笑えません。

 私を壊そうとしたときから、私の中のなにかが壊れてしまったようです。

 壊れなかったカラダと壊れてしまった心。

 もし私が私を壊そうとする前に出会えていたのなら……。

 いまさらそんなことを考えてもしょうがありません。

 私はもう……諦めたのです。

 そんな時、私はあの絵に出会いました。

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