鍵まかり

いっそに粉々なったらよかった

砕けきれずに残った硝子のかけらをのぞきこむと

右目だけが映った


窓硝子越しに見せてもらっていた光景は

精巧に反射させた自分のすがただった

硝子の向こうのあなたはぼくの幻想でしかなかった


自分の欲求や欲望や期待を勝手に投射して

わたしはあなたを知った気になった

ほんとうはあなたの何をも知らない

あなたと思っていたのはわたしの創った偶像


いまは見ないでとひび割れて

そっとしていてと砕け散る

それがあなたのほんしんならば

ぼくは黙って受け容れるほかない

それがせめてもの罪滅ぼし


鏡のなかの左目に見竦められ

ぼくはそっと欠片を裏返し

もう二度ときみを傷つけまいと

かたく目を閉じる

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鍵まかり @Key_MaCurry

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