もう、戻ろうとは思いません、私は隣国の王子様と幸せに暮らします:多
仲仁へび(旧:離久)
第1話 テイル・ピジョットバッシュの不幸
私の名前は、テイル・ピジョットバッシュ。
勇ましい言葉が連なっているが、性別は女だ。
そんな私は、ソードドラゴン王国の騎士。
しかも、上から数えた方が早い、トップ中のトップだ。
特別な地位を与えられているため、貴族と同じような扱いを受けている。
そんな私だが、初めはただの一般人だった。
剣の腕に自信ががったから、騎士になったが、女性だという事で差別されてきた。
「女性に剣などもてるわけがない」
「女が騎士になれるわけがない」
と。
それでも、周りの悪口に耐えながら頑張って来た私は、今の地位まで上り詰める事ができた。
雨の日も雪の日も、休みの日だって、一日も欠かさずに訓練に励んできた苦労が実を結んだというわけだ。
そして、念願の騎士になってからも、調子にのらずに任務にはいつも真面目にとりかかった。
それは普通に騎士として守るべき者達のために、という想いもあったが。
もう一つ目的があった。
それは、想いを寄せる国の王子インカジュール・ネス・ソードドラゴン様のために、だ。
新米騎士達が騎士団に入る時に、叱咤激励に訪れた王子に一目ぼれしてしまった私は、彼の為に頑張ろうと思って、今までやってきた。
幸いにもトップである私の実力をかってくれるため、インカジュール王子はよく私を頼ってくれている。
だからもっと王子に喜んでもらうために、精一杯結果を出そうとして今まで頑張ってきたのだが。
それはただ便利に使われているだけだったようだ。
その日私は、任務から帰って来たばかりだった。
手当を受けて、満身創痍の状態だ。
その時の任務は厳しかった。
なので、何度も命の危機に見舞われた影響で、体中に怪我を負っていたのだった。
手当をした医者からは、体に傷が残るだろうと言われていたが、それでも私はかまわなかった
王子の為に剣を振るえるなら、想いが報われなくとも満足していたからだ。
けれど。
「ねぇ、インカジュール王子。あの騎士の女の子、貴方の為に頑張ってるんですってね」
「ああ、テイルの事か。便利な奴だよ。まったく、ちょっと微笑みかければ、簡単にどんな任務設けてくれるんだから。でもそろそろ対応するのが面倒くさくなってきたから、さっさと何かの任務で死んでくれればいいんだけどね」
「あら、ひどいわね」
報告のために王子の執務室へ向かっていたら。
偶然その話声が聞こえてしまったのだ。
壁一枚隔てた室内では、聞いたこともない口調で喋る王子がいた。
王子は、どこかの国の王女と私の悪口を言いながら、仲睦まじく語り合っている。
私はそれを聞いて、堪えられなくなってしまった。
彼らは、任務に奔走している私を、影であざ笑っていたのだった。
信頼されていると信じていた自分が馬鹿みたいだった。
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