例年より遅い梅雨明け
糸内敏太郎
第1話
6時40分に目を覚ました。
自宅ではない。が、見慣れた天井。隣でまだ寝ている彼女。ぼんやりしていると、俺の目覚めからやや遅れてスマホのアラームが鳴り、気付く。カレンダー的には平日なのだ。仕事が一段落したので、休みを取って昨日は彼女のアパートに泊まった。安い缶ビールを飲んだのと、ストレスからの束の間の解放から、すぐに寝てしまった。
やや窮屈なシングルベッドの半分で丸くなっている彼女も目を覚ます。彼女は普通に出勤だ。俺はまだ覚醒しきっていないが、おはようの挨拶もそこそこに彼女は朝食の用意を始めるらしい。ゆったりした世界の中で声が聞こえる。パンと雑炊どちらがいいかと言う質問にどちらでもいいと答えると、雑炊だよ。と返ってきた。俺の返事は関係ないのだ。
彼女が作った雑炊を食べながら、いつもは忙しない自宅で見ている朝のニュースを優雅な気持ちで眺める。梅雨が明けてからまだ1週間も経たないが、容赦ない猛暑は今日もとどまるところを知らないらしい。
「熱中症警戒アラート出てるよ。気をつけてね。」
彼女に言ってみる。「今日も暑そうだね」って笑って熱い雑炊を食べる彼女。それよりも雑炊の味は薄くないかと聞かれたが、大丈夫だと答えておいた。本当はちょっと薄かった。
着替えと化粧をする彼女を眺めながら、朝食と昨夜の夕食の皿を洗う約束をした。俺は特に皿を洗うことに抵抗を感じない人間である。快く承諾する。後はやりかけのRPGをプレイしながら午前中を過ごすこととしよう。精一杯だらける予定を立てて笑顔で彼女を送り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます