第14話 武器庫は宝の山だった
新たに現れたダークエルフがもたらしたのは情報だけではなかった。
情報と共に新たな武力までもたらしたのだ。
アーテルの族長就任には"フルゴルの剣"が欠かせない。そこでアーテルは東の村に行こうと計画。リヨンとセピアも同行を決意し、四人は短い旅に出た。
アーテル、セピア、リヨン、セレナは安全で動物の多い森を抜けて、薄暗い森にちょっど入ったところだった。
「闇の森に入ったな。すでに昼を越えている。日暮れまで時間がないな」
「アーテル、道をそれるなよ。石畳の道を突き進め」とセピアが叫びます。
リヨンは肩をすくめて
「セレナ。相変わらず闇の森は不気味なところだな」
「前回はここから離れた回り道を行ったから。未知の領域だね」
「日が沈むまでに進めるとこまで行こう」
「魔獣がいそう。わっちの勘はあてになるかな」
「わからんが。頼りにしてるぞ。セレナ」
一行は積み重なった落ち葉から見える石畳を頼りに進む。曲がりくねった道を行き、倒れた樹木をさけた。
森は昼間でも薄暗い雰囲気だった。石造りの古い道標だけが頼りだった。しだいに空が暗くなり、前進は困難を極めてきた。
アーテルが腰を下ろして「ここで夜営しよう」と宣言した。彼はリュックから鹿の干し肉、クルミ、黒パンを取り出す。
「アーテル、今のうちに食っとけ」
「セピア、たき火はたいていいのか?」
「やめとけ。魔獣に見つかるだけだ」
セピアは硬い黒パンを水に浸して食べやすくしていた。
一行にとって、エールだけが疲れを癒してくれる存在だ。
「順番に見張りをしよう。俺、セピア、アーテル、セレナの順でいいかな」
「わかりました。リヨン殿」
夜の闇が近づく。木々の間から黒い影が見えるようになった。これは幻ではない。アーテルとセピアが剣を抜いて警戒し、リヨンもミスル銀の剣を持って立ち上がった。
「リヨン、気をつけろ! 」
「セピアさんこそ」
「小僧が言うようになったな」
セレナは弓を絞って狙いを定めた。矢がひょうと音を立てて飛んでいく。
今日は月明かりのない新月の夜だった。リヨンは森の奥へ目を凝らした。何かが森の中にいる。黒くて小さい影がすぐそこに。
セレナが「こそこそしてないで出てきたら! 」と呼び掛けた。
木々の間から躍り出た影はプーミリオと呼ばれる小人だった。
プーミリオの身長は子供と変わらず、黒い髪を生やしている。少し耳が尖っているのが特徴と言えるだろう。
アーテルが剣をプーミリオに向けた。プーミリオは少しも慌てない。
「何をしにきた。白状しろ! 」
「正直に言うよ。オイラは戦利品漁りに来たんだ」
「戦利品漁りだと! 盗賊風情が」とセピアが口を挟む。
「オイラは詩人のボーロ。ちょっと売れそうなものを分けてもらうだけさ」
リヨンは剣を鞘に納めた。ボーロは武器を何も持っていない。危険な存在ではないだろう。
「オイラを連れていってくれよ。きっと役に立つからさ」
「近くに騎士や魔法使いはいなかったか?」
「いないよ。オイラだけさ」
「そうか。こっちへ」
四人は持参した毛布やマントに丸まって寝た。
順番に見張りをして一夜が立つ。セレナは何事もなく快適に過ごせたようだが。アーテルは眠れなかったようだ。ディオは見張りの時以外は熟睡していた。
一行はプーミリオのボーロを加えて東の村に向かうことにした。ボーロを先頭にダークエルフが続く。
焼け焦げた木が痛々しい。村に近づいてきた事を感じさせる。アーテルが抜き身の剣を持って先頭に出た。
「ここから先は案内します」
しばらく歩くと、焼け落ちた木が立ち並ぶ場所に着いた。地面は
「ここが東の村の跡です」
「ここが? 武器庫なんでないじゃない! 」
「武器庫は地下にありますよ。セレナさん」
アーテルは焼け残った倉庫を指差した。
セピアを先頭に倉庫に向かう。アーテルが魔法を使って、重たそうな鉄の扉を開ける。セピアが扉を横にずらし、地下へと繋がる階段が現れると、アーテルが一番に降りていった。
ボーロがリヨンにしがみついてきた。不安そうに顔を見つめている。
「ボーロ。震えているのか? 」
「武者震いだい」
「さては怖がりだな」
「オイラは怖くなんかねぇよ」
怖がるボーロを置いて三人は階段を降りた。
セレナが"ルーメン"と叫ぶと、暗かった武器庫が光に照らされた。
地下には様々な武具が置かれていた。ミリル銀製と思われる剣や槍もある。セレナは長弓を見つけた。矢筒もあったので、何本か貰うことにした。
いつの間にか来たボーロも欲しそうに見ていた。ボーロが持ってきたのは一本の短剣だった。片手でも扱えるように短く作られているもの。
「実にお似合いだ。小さいお前には」
「オイラにくれるの」
「アーテルからのプレゼントです」
アーテルは目当ての剣を見つけて嬉しそうだ。セピアとアーテルは不思議そうに"フルゴルの剣"を見つめていました。
"フルゴルの剣"は実に不思議な剣だ。その剣を鞘から抜いてみると、刀身には見たこともない文字が描かれていました。
「古代文字でしょうか」
「さあな。古いのは確かだ」
セピアは感慨深そうに呟いた。
「アーテル、これで正式に族長になれるな。先代族長の時から支えてきた俺の役目も終わりかな」
「いえ。これからも支えてください」
「アーテルの族長就任を皆で祝おう」
(15話に続く)
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