第61話 急逝〈きゅうせい〉
(真司・・・何でおまえがこんな事に・・・。)
知らせを受けたのは昨晩の事だった。
電話の向こう側の
会話の内容も半分理解できない、そして後は言葉に詰まって沈黙が続いた。
内容を理解できた事は、
車の運転手は飲酒運転だったらしい。
正直、信じられない話だと思っていた。
それを前に
だが、
深夜に近い時間だった為か、
勤務態度の悪い社員が深夜に近い時間に有給だけは申請する、親友が亡くなった事も虚偽だと思われたのかもしれない。
結局有給は翌日のみの一日しか認められなかった。
帰郷するには往復するだけで八時間以上架かる。
移動を考えたらほぼ時間がない。
始発の新幹線に乗車していたが新幹線の旅がこれ程長いものだと感じた事はなかった。
新幹線内での数時間、
初めて出会った中学時代の事から現在に至るまでの記憶の整理の時間となっていた。
異性に対して意識が強まる頃、異性からの人気は高かったが同性からはやっかみからかあまりウケは良くはなかった。
中学時代の三年間で二人は親友と呼べる関係となっていた。
高校進学時、二人は別々の高校に通っていたのだが交流は途絶えなかった。
そして現在も同様である。
その
衰えていく姿を見せ続けられ
苦しい心情が長い時間続きこれ以上の苦しみはないものだと思い込んでいた。
だが
だが周りの人間は真司が亡くなるという覚悟が出来ていない状況だった。
突然亡くなったと聞かされ、その瞬間には
家族との別れの言葉も交わせず、そして残されたものは
だが共通している事はあまりにも早い死という事だった。
一家の大黒柱の突然の死は残された家族にとって精神的にも経済的にも大きな負担となる。
精神的支えになれるはずなどない。
だが経済的な支えは
生涯独身を貫いていく事だろうと自身でも思っていた。
それに反して
若かりし日の努力の結果だったが、特に趣味も無く散財する癖も無く貯金をしている訳でもないのに
金の使い道を知らない、解らないといった状況であり死に金でもあった。
ただ問題は
旦那の親友とはいえそうしてもらう道理はない。
だが
どうせ持っていても使い道などない。
墓場まで金は持っていけるはずはないのだから。
葬儀開始までまだまだ時間がある。
他人である自分が図々しくも直接遺族に会いに行くのは常識から外れた行為だろうが
駅から直接
「今回はこんな事になり・・・何というか・・・何て言ったら・・・。」
どんな言葉で慰めて良いのかわからない。
一晩経って気持ちの整理をしたのだろう。
「
親友であった
親友の妻とは言え
そんな他人が立ち入って良い事なのだろうか?
「・・・これからどうするつもりなんだい?」
「何も変わりませんよ・・・ずっとこのままです・・・。」
実家に帰るなどと言った選択肢は考えていない様だ。
「だけどそれでは、今までの様な生活は出来ないのではないのかい?」
今言うべきことではないのは解っていた。
だが
「私達以外にもこんな環境の人達は居ますよ? その人達に出来て私達が出来ないはずはありません。」
片親で立派に生活を営んでいる家族は確かに多く居る。
だが、何らかを犠牲にする事は多々あるはずだ。
子供の為に身を削って働き続けた事による心身への負担、子供が進学を諦める状況など、まさに
「ああっ! 腹の探り合いみたいなことはヤメだ!」
「はっきり言うよ、以前より生活は苦しくなるよ、だから俺が金銭的な支援をする。」
「はあ? センパイ何言ってるんですか? 私達の事バカにしてません?」
その表情には怒りすら感じる。
「他人であるセンパイが私達に金銭的援助?」
「本当に失礼な人ですね・・・そんなことされて私達が喜ぶとでも?」
「だが考えてくれ、今後お金は更に必要になる・・・
「
「私が働いて進学させます。」
「だったら、
「私はそうはなりません。」
「何故それが解るの? そんな保証はないよね?」
「
「あの
「そんな思いを
「もし、もしもだよ? そーなったら俺が
子供には母親が必要だ、その点
「しかし・・・他人のセンパイにそこまでしてもらう義理は・・・。」
「そこだよ! 他人ってなんだよ?」
「
「娘同然の
「
「俺の気持ちを完全に無視してるね・・・。」
「俺だって、
「だけど一緒に生活している訳でもないし、結局は金っていう選択になっちゃうんだ。」
金だけ出す。
一般的に嫌な文句である。
何かというと金というのは悪者にされがちである。
だが金でしか気持ちを表せない事もある。
今の
「わかりましたよ・・・。」
「だけど今はこんな状況です。」
「落ち着いたらセンパイに言われた事を考慮して返事をしますよ。」
「まったくセンパイは・・・、このお人好しめ・・・。」
使い道も無い。
使う予定も無い。
何度も言うがおしい金ではない。
もし与えたとして感謝などされなくても良い金だ。
金はいくらあっても困らないだろう。
だが当面必要がない金だ。
そして会社に居続ける限り、また貯まっていく事だろう。
有効活用できない金を有効活用できるのはこの提案が了承された時なのだと、
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