第46話 顔合せ〈かおあわせ〉
今日の昼の業務が始まる頃、
その資料の一部を朝から作成させられていたのである。
作成させられていたのはタイムラインであった。
要は顔合わせの時間割といったところだろうか。
パソコンの苦手な
司会進行を
中々のやり手らしい。
開会の宣言と進行役の挨拶5分・・・
頭がおかしくなりそうである・・・。
何とか2時間以内に終了するタイムラインを作成できた。
出来た資料を
「うん・・・上々ね・・・。」
何とか合格点がもらえたらしい。
「でも一点だけ訂正してもらいたい箇所があるわ。」
まあ一点だけなら然程の修正は要らないだろう・・・。
「挨拶の順番なんだけど、
一応、
サブリーダーの挨拶ならリーダーである
だが美春の事だ、何の根拠も無い事はしないはずだ。
再度
「うん、完璧だわ・・・。」
「あなた、私が修正するよう指示した時腑に落ちない顔をしたわね?」
「でも素直に修正した、どういった意図だったのかしら?」
「普通は私はサブリーダーになっていますから、
「しかし
「きっと何かは解りかねますが、考えがあると確信できたからです。」
「そう・・・やっぱりあなたは良いわね・・・。」
「私の見込み違いではなかったようね。」
ただ
本心は解らないが、それが信用となっている。
つまり
作業が終わり
やっと苦手なパソコン作業から解放されたのである。
しばらくすると部屋のインターフォンが鳴っていた。
部屋のロックが解除され一人の若い男性社員が入室してきた。
「失礼いたします、
中々の好青年である。
見た目は正直イケメンといって差し支えない。
何といってもまだ若い、将来を有望視されている事だろう。
「
「始めまして
正直
笑顔が眩しい、これは女性社員から人気があるはずだ・・・。
「
「
どうも腑に落ちない。
それで仕事を一緒にできるのが楽しみだと?
単なる嫌味だろうか?
だが
余程のポーカーフェイスか何かだろうか?
昼休憩が終わり会議室に来ていた。
プロジェクト参加者は決められた席に座っている。
席にはプロジェクトの資料、プロジェクトの参加者の名簿、そして
顔合せは2分程遅れてのスタートとなった。
司会進行を担当している
単説に解りやすい挨拶であった。
次にプロジェクトリーダーである
タイムラインを作成していた
次は各自の挨拶となる、20名いる内それぞれが3分の時間を割り当てられていた。
一人ずつ挨拶が始まる。
進行していく内、
挨拶をする社員の中に
挨拶の中でやたらと
20名全員の挨拶が終了し、最後は
正直挨拶の文言など全く考えていなかった。
朝から苦手なパソコン作業をさせられており、この顔合わせ中にはタイムテーブルを作成した身として進行の遅ればかり気にしていた。
どうせ社内には政幸のロクな噂はたっていない。
なら直接関わり合いが深くない社員に媚をうってもしかたない。
時間を見てみると予定時間から4分弱の遅れだった。
「この度、このプロジェクトのサブリーダーを拝命致しました、
「皆さん宜しくお願い致します・・・・・・以上です。」
挨拶があまりにも短かったからである。
ほぼ全員が
挨拶すらもロクに出来ないのかといった様子であった。
皆が呆れていると、
「はい、注目!」
皆が
タイムラインにこの様なスケジュールは組まれていない。
「皆さん、挨拶お疲れさまでした。」
「正直私は皆さんの挨拶を聞いてがっかりしています。」
会議室内はざわめきはじめた。
「皆さんの手元の資料にタイムライムラインがあります、よく見てください。」
「最後の
「たかが1分と思われるかもしれません。」
「だけどこのプロジェクトの重要性を理解してください。」
「プロジェクトが失敗に終わりましたら、プロジェクトに携わった時間は無駄な物となります。」
「そして更には従業員のリストラが始まる事でしょう。」
「このプロジェクトは一刻も早く徐々に成功させていくしかありません。」
「すなわち時間を管理できないものにはこのプロジェクトには必要のない人材という事になります。」
周囲は動揺している様だった。
「最初、私は進行役の
「その時点でこのタイムラインが曖昧なものとして認識して時間を気にしなくなった人たちもいた事でしょう。」
「私は皆さんの挨拶を聞いている内に3分くらいの遅れになると予想していました。」
「でも1分弱に短縮できた。」
「理由はお解りですか?」
皆、各自が困惑の表情を見せていた。
「最後に挨拶したサブリーダーの
何か流れがおかしくなっている・・・。
「彼は自分の挨拶を考えていた事でしょう。」
「しかしその挨拶を行うと4分の遅れが取り戻せない。」
「それを見越して自分の挨拶時間を10秒足らずで終了させ3分弱の時間短縮を行ったのです。」
「彼がサブリーダーに任命され不満に思っている方も多い事は聞き及んでいます。」
「私と直接業務を行うことの多い立場に彼を据えたのはこれが理由です。」
なるほど、朝言っていた考えとはこの事だったのだろう。
「中にはそれに気づいたのか数名は挨拶を単説に切り上げる人もいました。」
「例を挙げると進行役の
「
「それとあいさつの内容で気になった点がありました。」
「それは私の著書を褒め称える人たちが数人いた事です。」
「はっきり言いますが、私にお世辞は通用しません。」
「同様に媚を売っても逆に評価を下げる事になります。」
「私の著書は教育論です。」
「このプロジェクトが新人教育でしたらそれも有効でしょう。」
「しかしこのプロジェクトにそんなものは必要ありません。」
「私の意見に賛同できない者、納得できない者は申し出てください。」
「ペナルティー無しで元の部署に償還してあげます。」
その理由として脱落者は一人も居なかった。
そして社内で評判の最悪な
全くこの人は・・・。
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