第二話 今日は久し振りの再会ばかりですね
舞踏会の端の方でアンソニー様とアンリエッタが一緒に居るのが見える。
二人は仲睦まじく寄り添いあって他の貴族令嬢や令息と談笑し合っている。
私は引きこもりさせられた為、同世代の友達は居なく、話し相手はお父様と婚約者のアンソニー様と家庭教師とメイドや執事など使用人達だけです。
なのであの様な光景を見るととても羨ましく尊いものに感じてしまいます。
私が手に入れれなかったものがそこにあるのですから…
アンソニー様が私がぼやーっと見ている事に気付き、凄い顔で睨んできました。
私何かしましたか?
あ、間抜けな顔で見ていたから恥ずかしいから辞めろという事ですかね?
貴族令嬢らしくキリッとした表情に戻ると近づく事も無く、私に背を向けてまた談笑に混ざっていました。
愛情は一切ありませんが、少しだけ寂しく思えました。
仮にも私の婚約者なので少しは話かけてくれても良いのですが、私と会うとアンソニー様はいつも冷たい顔をされています。
貴族なら当たり前の政略結婚の相手として選ばれたのがアンソニー・アダルマン伯爵令息です。
初対面から彼は私に対して興味も無く、何を話してもつまらなそうにされます。
会う日はいつも仏頂面で酷い時はお茶一杯飲まずに退場される事もしばしば…
一杯飲めた日には奇跡と思うくらいです。
伯爵令息に失礼があって怒ったのかも知れないと思い、お父様にご迷惑をかけたくないから慌てて謝罪の意味も込めてお菓子を作りお渡しした所、その日から少しだけ長く部屋に居てくれる様になった。
そして、必ず立ち去る前に次のお菓子のリクエストだけして帰るのが定番になり、次に来る日に合わせて、そのリクエストのお菓子を作る様になり、帰りにはお土産の手作りお菓子を渡しました。
お菓子が好きとか可愛らしい所がある方なんだなぁと思いはしたもののやはり、恋愛感情は一切ありません。
でも、これは政略結婚なので私から破棄する事は出来ません。
それなら恋愛感情が無くても少しでも穏やかな関係を築けたらと努力するも、報われず今では諦めています。
だって、毎回無愛想で冷遇する人に対してどう接すれば良いのか教えて頂きたい限りです。
そんな人の機嫌取りの為にお菓子を作るくらいならいつも私と仲良くしてくれる使用人達と一緒に楽しく食べて貰いたいもの。
だから、お菓子は作るけどアンソニー様にあげるのは辞めました。
「何故お菓子を作るのを辞めたのだ?」とある日言われましたが、上手く言えず、ただ「申し訳ありません」とだけ答えた。
その後、とても怒ったアンソニー様は扉を蹴って帰って行きました。
お菓子が食べれないだけで扉を蹴って、見えない(と本人は思っている所)で痛がって居ました。
痛がるくらいなら扉を蹴らなければよろしいのに…
それだけアンソニー様はお菓子が大好きだったのですね。
でも、お菓子を食べて貰っても美味しいの一言も言えない人にはあげたくありませんので。
その日からアンソニー様はほとんど来なくなり、今日も久し振りの再会です。
そう言えばアンリエッタも久し振りの再会です。
今日は久し振りの再会ばかりですね。
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