転生小説をバカにしてた俺が転生して無双する話
結城 天
第1話 転生小説の存在
高校生活も1年が過ぎた高校2年の春。
皆が仲の良い友達、新しいクラスメイトと楽しく話をしている中、俺は隠れて小説を読むことに没頭していた。
1年間友達ができず友達作りを諦めていた俺は、溶け込めないクラス内で気を紛らわすために小説を読むことに夢中になっていた。
そんな中唯一声をかけてくるクラスメイトがいる。
「よっ圭太。まーた小説読んでるの?友達でも作ったら?」
聞き慣れた声、お馴染みの顔。
声をかけてきたのは幼馴染の
「うるさいな。お前も俺なんかに話しかけてないで友達と話してきたらどうだ。まさかお前もクラスに馴染めないのか?」
「そんな訳ないでしょ。圭太じゃあるまいし。寂しそうだったから構っただけよ。」
「じゃあ構わなくて結構。集中してるからまたにしてくれ」
智香は不貞腐れながらその場を離れていく。
小説を読んでいる時間は話しかけられても困る。
一度集中を切らされたため、一息つこうと辺りを見渡す。
新学期ということもあり、皆が色んな人と言葉を交わしている。
自然と俺以外にも仲間外れがいないかと探してしまう。
絶対に俺以外にも溶け込めず一人でいる奴がいるはずだと。
俺の予想通り一人でいる奴は数人いた。
その数人も小説を読んでいるようだった。
何を読んでいるのか気になり、通りかかり見てみようかと席を立つ。
あわよくば同じ小説を読んでいれば声をかけてみようかと・・・。
俺の読んでいるものは特にこれといって定まっている訳ではなく、有名な作家のもので、長編のものだったら手あたり次第読んでいた。
理由は単純で、長い時間読めて高い確率で面白いからだ。
新学期に一人で小説を読んでいるこの数人も同じ感覚の人がいれば、気が合い友達になれるかもしれない。
友達作りを諦めていたが、少し希望が見えた気がした。
が、その数人が読んでいたものはタイトルがものすごく長く、可愛い絵が描かれている本だった。
どのタイトルにも大きい文字で「転生」と書かれている。
俺は通りかかっただけで、そのまま遠回りをして再度自分の席に着いた。
あの本は何なのだろう、転生とは何なのか、転生という題材が流行っているのか、少し動揺しながら考えていた。
友達がいないため聞ける人もいない。
仕方なく幼馴染の智香に聞こうと、智香が一人になるのを見計らい声をかけることにした。
智香の方を見ると丁度友達と思われる人との会話を終えたようだ。
周りの空気を伺いタイミング良く話しかけることに成功した。
「智香。今大丈夫か?」
「ん、どうしたの?」
「小説のことでお前に聞くのは間違っているかもしれないが、あいつらが読んでいる転生が題材の小説って流行っているのか?」
「小説バカのあんたが知らないの?」
智香が勝ち誇ったような顔でそう答えた。
「知っているんなら早く教えろ。」
何なのその態度、とブツブツ言いながら智香が教えてくれた。
「私も読んでないからあんまり知らないけど今すごく流行っているラノベ。有名なやつは漫画化やアニメ化もしてる。小説読まない人も知っているくらい今流行っているのよ。」
こいつも何にも知らないじゃないか、と少し苛立ちがあったが、これ以上聞いても無駄だと思い、文句を言うことはやめた。
それより流行っているなんて全く知らなかった。
漫画を読むなら小説を読むし、アニメを見ない俺が知らないのも当然だった。
「わかった。ありがとう。」
そう簡単に礼を言って、再び席に戻る。
その日は、転生小説がどれくらい面白いのか、どういった内容なのか、気になって今読んでいる小説も頭に入らなかった。
もちろん授業なんて聞き流していた。
いつも大して真剣に聞いてはいないが・・・。
学校が終わり、帰宅部の俺はすぐさま本屋へ寄った。
探すのに時間がかかると思ったが、本当に流行っているのか本屋では前面に出されていて、すぐ見つかった。
とりあえず一番人気なものを見てみようとランキング1位と書かれている本を手に取ってレジに並ぶ。
並んでいた人も同じく転生と書かれている本を買っているようだった。
俺は急いで家に帰り小説を読むことにした。
いつも小説を買った後は楽しみでたまらない。
ワクワクした気持ちで本を開き読み始めた。
---
2時間ほどで全て読み終えてしまった。
読みやすいと言っていいのか、独特な手法で書かれているためかすぐ読み終えてしまった。
最後の完結していないと思われる内容と、本の表紙に1巻と書かれているため、まだ続きがあるのだろう。
読み終えたときに、なんてつまらない小説なんだろう、と思った。
俺が今まで読んできた小説は、現実にはないだろうと思われる内容でも、リアリティさや現実的に考えさせられる内容があった。
なのに何だこの小説は。
記憶がある状態で転生して異世界に行き、特別な能力を持って圧倒する?バカにしているのか。
こんなの何が面白いんだ。
憤りを感じ、机の上へ本を投げた。
こんなものが流行っているなんて、世も末だな。
そう考えていた時に母親の呼ぶ声が聞こえた。
いつの間にか夕飯の時間になっていた。
とりあえず小説のことを忘れ、食事へと向かうことにした。
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