3—39 イベント
【前回のあらすじ】
ルーシーを祭りに連れて行く日の午前中、リユが美那に連れて行かれたのは、ヘアサロン。なぜかリユもカットされることになっていて、抵抗するも、学割・初回割引・お友達紹介の安さと、真由とのデート(?)のことも考えて、切ってもらう。すると、リユはいつもと違う見栄えの自分自身に驚く。ふたりからのルーシーへのプレゼントを
一度家に戻って、靴だけ外バスケ用の白いナイキ・エアマックスに履き替える。さすがに今日はバスケすることはないだろうけど、なんか安心するんだよな。大して荷物はないけど、プレゼントも買うし、一応小さめのリュックを持っていく。そうだ、土曜日はどうしよう。美術館だし、荷物がない方がいいのか? そういや、香田さんに長野みやげのジャムがあったな。あれだけだったら、小さい手提げ袋でいいか。
横浜駅のショッピングストリート・ジョイナスにある目的の店はすぐに見つかった。
箸の専門店だけに、当たり前だけど箸の種類と数がスゴい。値段も数百円から、上は万単位……。
最初は圧倒されたけど、美那の感じだと、値段的には1000円から2000円程度を想定している感じだったから、お店の人に訊いて、エリアを絞ってから、箸を選ぶ。
可愛めとか、渋めとか、
包んでもらう前に写真に撮って、美那に送る。ついでに昼飯をどうするか訊く。
——>なかなかいいじゃん! ありがと。ごめん、お昼はひとりで食べといて。
だってよ。
銀行ATMで1万円引き出してから来たけど、結局1500円前後の箸を4
なので、昼食は適当に目についた牛丼屋で済ます。
飯を食い終わった時点で12時ちょっと前。1時半に鎌倉駅となると、まだ時間がある。
ハンバーガー屋だったら、店の中でちょっと時間を
美那は、よくわからんけど、あんまり歩けない、とか言ってたから、たぶん由比ヶ浜は行かないだろう。今年の夏はまだ砂浜には行ってなかったし、往復で40分くらいみたいから、ひとりで行ってみることにした。
12時半ごろに鎌倉駅に着いて、くそ暑い中、日陰のほとんどない海岸までの道をひたすら歩く。
20分ほどで海岸に。平日とはいえ、夏休み中だから、パラソルが立ち並び、足の踏み場がないというほどではないけど、そこそこ混雑している。
砂浜に足を踏み入れる。予想はしていたけど、水着じゃねえし、ひとりだし、なんか場違いな感じ。
道路を渡ると、広場みたいなところで何やらイベントの準備をしているのに気がついた。
何をやるのかと思って、
イベント名が背中に入った赤いTシャツを着ているオジサンにちょっと訊いてみる。
「すいません。これはどんなイベントなんですか? 誰でも参加できるんですか?」
「うん。高校生だよね?」
「はい」
「じゃ、OK。中学生までは土日の昼間にやるんだ」
「何時に来れば、いいんですか?」
「ちょっと待ってて」
その人は端の方に停めてあるワンボックス車まで歩いて行って、中を覗き込んだ。
10秒ほどで車を離れると、手に紙をひらひらさせながら戻ってきた。
「はい、これ、チラシ」
「あ、すみません。わざわざ」
「6時半に受付開始で、8時に受付終了。シュートは3本。フリースロー3本連続か、3ポイントシュートを2本決めると、賞品が出るんだ。賞品はまだ教えられないけど、受付開始時に並べるから楽しみにしておいて。
「あ、ちょっとまだ友達に聞いてみないと、参加できるかはわからないんですけど」
「ああ、うん。ま、気が向いたら来てよ」
「はい。ありがとうございます」
いや、これ、まじ、俺たちにぴったりのイベントじゃん!
3人とも成功で、全員賞品ゲットか⁈
鎌倉駅に戻ったのは1時20分頃。
美那たちはまだ来ていないようだ。
改札に近い日陰に入って、例の写真投稿アプリでバスケ技術のアカウントを開く。
「リユ!」
と、いきなり美那の声。
驚いて顔を上げると、もっと驚いた。
なんと、
やべ、ふたりともマジ可愛いし、なんか美那に至っては妙に色っぽい。
「どう?」
「え、いや……」
「ねえ、マジ、可愛いぃぃぃぃぃっ! って思ったでしょ」
「バレた?」
「ルーシー、着るの大変だったんだよね?」
「ハイ。でも、とても楽しかったです」
「お前はまだわかるけど、ルーシーの浴衣とかどうしたんだよ」
やばい。あまりに可愛すぎて、美那を
「バレー部の子に借りた」
「へえ……」
「どうですか、リユ?」
「あ、とっても、キレイでカワイイです。すごく、似合ってます」
俺は変に緊張して、ぎこちない言葉になってしまう。
「ハイ。どうも、ありがとう、ございます」
ルーシーは髪をアップにして、カンザシまで差している。
「というわけで、あんまり歩き回れないんだけど、とりあえずどうする?」と、美那。
「どっか、小町通りとかでお茶でもするか?」
「うん、そうだね」
「あっ!」
俺は気付いてしまった。
さっきのイベント、美那たち、この格好じゃ、無理だよな……。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと早く着いちゃったから、由比ヶ浜に行ったんだよ。夏の砂浜も味わいたかったし。そしたら、海岸のすぐ近くで、夜にこんなイベントをするらしいんだよ」
俺は折りたたんでリュックに入れていたさきほどのチラシを出して、美那とルーシーに見せる。
「ワーォ!
「でも、ルーシー、この格好じゃ……」
「アア、そうでした……」
「ま、残念だけど、
俺がそう言うと、ルーシーは何かを思いついたような表情で美那の方を向いて、美那の浴衣の
「ちょっと、ミナ、いいですか?」
「え、なに、ルーシー」
ルーシーが美那を俺から少し離れたところに連れて行く。
え、どういうこと?
で、ふたりで何やら相談している。どっちかっていうと、ルーシーが主体的に話しているみたいだ。それに対して、美那が
そして、なぜかハイタッチをすると、戻ってきた。
「行こうよ、それ」と、美那が笑顔で言う。
「だけど、その格好じゃ……」
「うん。行くのは、バスとかタクシーでいいじゃん。それに、ま、入るかどうかはわかんないけど、シュートを打つだけなら、なんとかなるんじゃない? 浴衣姿で入れたら、盛り上がるだろうし」
「はい」と、ルーシーもなにやら満面の笑み。
「ま、確かに盛り上がるよな。ふたりともメチャ可愛いし……」
「ミナは、とても、キレイです。美しいです」
「ありがとう、ルーシー。ルーシーも、とーーーってもビューティフルだから。それに、とってもキュートだし。ね、リユ?」
「ああ、うん……いや、マジ、ふたりとも……」
いや、ほんと、見れば見るほど、ふたりともキレイだし、ヤバいし。駅前を通る男どもも結構チラ見して行くし。
「というわけで、今日はリユ、両手に花だね?」
「いや、主役はふたりで、俺はお
「それは、ダメです、リユ。今日はふたりをエスコートしてもらいます」と、ルーシー。
なんか、昨日、美那の家に泊まって、ルーシーは性格が変わった⁈ ちょっと打ち解けすぎじゃ? 女の友情ってそういうもんなのか?
「わたしたちは、たぶんシュートは入らないと思うから、リユ、頼んだよ!」
「いや、マジ、プレッシャーだし」
「大丈夫、です。わたしたち、ふたりが付いています。きっと、入ります」
ルーシーはそう言うと、俺に向けて小さくガッツポーズ。そして、美那と視線を合わせて、ふたりでニコリ。
な、なんなんだ? 一体、ふたりの間に何があったんだっ?
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