魂恋~たまこい。幼馴染とイチャイチャしようとしたら、女体化してしまった話~

苦虫

第1話 幼馴染とイチャイチャしようとしたら女体化した。


玄関のほうから誰かが走って来る大きな音が聞こえてきて、寡室結(かむろ・ゆい)はうっすらと目を開けた。



二階のリビングから追い出された後、不貞腐れて横になっていて、いつの間にか眠っていたらしい。

すっきりと目覚めないぼんやりとした頭の中に、部屋の扉を開ける音と聞き慣れない声が飛び込んでくる。


「おい、起きろ! ババア!」


声は聞き覚えがないが、その乱暴な物言いは一人息子の縁(えにし)のものだ。




縁は高校一年生、夏が終わり秋がくれば十六歳になる。

いい加減、甘えの延長の反抗期を脱して欲しい。


(彼女も出来たんだし……)

結は寝ぼけ眼が起き上がりながら、にんまりと笑った。


「なに、笑ってんだ、気持ちわりぃ……」


縁の遠慮のない言葉に、結は頬を膨らます。

「縁、あんたねえ、いい加減、親に対してその態度は止めなさいよ。高校生になってまだ反抗期とか恥ずかしくないの?」


苑(その)ちゃんに嫌われるわよ、とまた含み笑いをしそうになりながら、結はようやく目の前に立つ息子の姿に視線を合わせた。


「あら? 縁、あんた、何だか……」

結は息子の姿を上から下まで眺める。



縁は結にそっくりな姿をしている。


絹糸のように滑らかで光沢を帯びた癖のない髪、光線の加減で青みを帯びて見える黒目が大きな瞳、白い磁器のような肌、可憐な少女を模した人形のように美しい姿をしていた。


結の知り合いの中には「生き写しだ」と言う人間もいる。

確かに小さいころは、結の目から見ても自分自身の幼いころを見ているかのようにそっくりだった。



だが第二次性徴が始まってからは、男の中では細身ではあるとはいえ、女性特有の丸みや柔らかさを帯びた体つきとは異なってきている。


女性に間違えられるような繊細な容貌をしていても、その顔つきや表情は男特有の鋭さや無骨さを感じさせるものになってきていた。


元々縁は、少女のような外見とは真逆で、内面は女性らしい要素とは無縁だった。


生来の性格もあるが、子供の時から好きな女の子の目を意識してことさらそうなろうとしていたのではないか、と結は睨んでいる。




そこまで考えて、結は「縁が子供の時から好きな女の子」のことを唐突に思い出した。


「あんた、苑ちゃんはどうしたの? 二階に一緒にいたんじゃないの?」


結は縁の泡を食ったような表情を見て、ふふんと笑った。

「ははーん、あんた、苑ちゃんに何か変なことをしようとして怒らせたのね?」


そういうことなら、と結は胸を張った。

「お母さんが相談に乗ってあげるわ。お母さん、女を三十五年やっているからね、何でも聞いてよ」


「何を言ってるんだ、お前は!」

母親の言葉に、縁は怒りと焦りで顔を赤くして叫ぶ。




いつも通りの乱暴な物言いに、結は機嫌を損ねたように眉をしかめたが、ふと何かに気付いて、息子の顔をまじまじと眺めた。


そうだ、先ほどからずっと妙な違和感を覚えていた。


結は、自分の目の前に立つ息子の姿を、もう一度上から下まで眺めてから、呆気にとられて言った。


「縁、あんた……女の子になっていない?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る