ドリムリーパーⅡ
博元 裕央
・第一夜
ソファに寝転がりながら、俺達は二人でだらだらと喋っていた。
お互い本を読んだりしながら。
後から思い出せないくらい何気ない下らない話だ。最近読んで好きになった漫画についてとか、しょうもない冗談についてとか。
明るくも綺麗でもない中途半端な薄暗い曇天。だらだらと付けっ放しのTVの中では、どこかの国の大統領が辞意を表明していた。興味は無い。関係も無い。ただ、辞意を表明しなければならんような奴が辞めれば他国の人間からすれば笑いの種なニュースが減るだろうな、という程度だろうか。
そんなどうでもいい時間なのに、何故だろう、凄く満ち足りていた。何でだ?
(何故だろうなんて思わない方がいいわ。今はまだ時間があるのだから)
誰かが静かにそう言うのが聞こえた気がした。誰だ? 空耳か? それともウトウトして夢でも見そうになったか?
いや、違う。
夢でも見たかじゃない。今、これが夢なんだと気づいた。気づいちまった。何で、こんなどうでも良い時間に、こんなに安らぎを感じていたのかも。
一緒にいるあいつは、もう死んでいる。夢だから、ここにいるんだ。オレの大事な人。大切で、大好きで、こんな何でも無い時間が本当にかけがえ無くて。こんな時間を取り戻せるならどんな代償だって払ったのに……
(ごめんなさいね。それでも、どうしても人は起きてしまうものだから)
声はそう要った。女の声だ。誰だろう、綺麗な声だ。夢の女神様か何かだろうか?
(いや、疑問を持ったから気づいちまった。疑問を持つなと言ったアンタは優しい)
(……私が言わなければ、疑問を掘り下げなかったかもしれない。そして私は本来、夢から夢を跳ね渡り、夢を終わらせ目を覚まさせる事が仕事なのよ)
女はそう言った。だから、目を覚まさせちまって済まないって事か。成程。だが。
(しゃあないさ。久々にあいつの顔を見れて、声を聞けただけでもありがたい。おかげで、起きてからの活力になるさ)
十分だ。ああ、いい夢だったよ。
(……そう、良かった。夢って、そういうものであってほしいと、私も思うから)
その答えに女は安堵した様子だった。嬉しそうだった。ますます悪くない夢だ。
(最後に、あんたの名前を教えてくれないか?)
嬉しくてそう尋ねた。女は、起きても覚えてないと思うけど、と前置きし答えた。
(
目が覚めていく。夢の中に、こんな女神がいる……悪くない、そう思った。
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