第2話 ファティ・クライシス
私は一人で生きる運命の元に生まれてきたのだろう。
もはや、それが起こった時、諦めに似た感情を抱いていた。
「君と結婚なんてできるわけがない!」
向かい合った婚約者が私にそう言ってくる。
婚約破棄されたようだ。
でも、今回は持った方だ。
数か月前に交わした婚約だから。
悪い時は、一週間ほどで婚約破棄されたことがあるし、その時に比べたら全然マシ。
「僕の目の前から消えろ! この家には二度と近づくな! お前がいるだけでどんどん不幸が舞い込んでくるんdな」
何度繰り返せば良いのだろう。
もう、諦めた方がいいのではないだろうか。
誰かと共に生きる事など不可能なのだ。
なぜなら、私は呪われているのだから。
「人に迷惑をかけるような奴は生理的に受け付けないんだ。だから、お前を妻にすることは無理だ」
婚約破棄されるのは、もうこれで七度目だ。
私ファティ・クライシスは、人から呪殺令嬢と呼ばれている。
それはなぜか?
関わった者達が、ことごとく無残な死をとげたり、病気になったり、怪我をするからだ。
友達も、家族も、飼っていたペットも、すぐ近くを歩いていた見知らぬ他人も。
例外はない。
そのおかげで、嫁の貰い手がつかない現状。
クライシス家は今にも没落しそうな貧乏家だ。
だからそんな家のために、良い家とつながりを持ちたいと思っているのだが、関わった家からはことごとく婚約を無しにされる有様。
もう、三度だった。
苦労して、相手とのお見合いにこぎつけ、良い印象を与えて婚約に、と行くところまでは良い。
けれど、そこから先になかなか進まなかった。
でも、少しは相手の気持ちもわかる。私との婚約が結ばれた途端に、婚約者の両親が怪我をしたり、使用人が死んでしまったり、ペットが病気になったりすれば、誰だって元凶らしき存在を遠ざけたくもなるだろう。
だから、私の人生はすこぶるうまくいっていない。
こういった事は、幼い頃から続いている。
あまりにも不幸が続くものだから、何度目かの骨折をしていた両親は、「娘には何か悪霊でもとりついているのでは」と思うようになっていた。
実際両親二人は、
「貴方には、もしかして何かよからぬものが付いているんじゃ」
「お前の言う通りだ。きっとそうだろう。一度見てもらった方が良いかもしれないな」
と、腕の良い専門家を探し出す始末だ。
それでしばらくはあちこちの事情専門家たちにみせては、はずれをつかまされる日々が続いたのだが、
両親の努力が実ってか、本物に当たる事ができたらしい。
苦労をかけっぱなしで申し訳なくなる。
ぜひともいい家に嫁いで、両親に恩返しがしたいものだが。
残念な事に専門家探しの最中も、婚約破棄が続いていた。
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