お義母様は、そんなにもわたくしのことが嫌いだったのね。
ツッコミどころ満載。(笑)
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ネイトがうちからいなくなって、セディーは寂しがっていたけど。たったの数度見ただけの弟をこんなに可愛がるなんて、セディーは優しい子なのね。
寂しくないように、お母様が一緒にいてあげるわ。
それからも、セディーの体調は良くなったり悪くなったりを繰り返している。
「虚弱な子でも大きくなったら丈夫になるから、あまり心配しなくても大丈夫ですよ」
なんてお医者様は言っていたけど――――
確かに、セディーはこれと言った大きな病気はしていない。ただ、よく熱発して咳をして苦しそうにしている。それを大したことじゃない、と言い切るのはどうなのかしら?
お外で遊べないせいか、セディーは本をよく読む子になった。
三歳でもう字が読めるだなんてすごいわ。セディーはとっても頭が良いの。きっと、エドガー様に似たのね。
お義母様からしきりに、
「そろそろ社交へ出てはどう? セディーも大人しい子で、ネイトはうちにいるのだから時間は捻出できるでしょう?」
というお誘いが来るようになった。
お義母様は相変わらずなのね・・・
お義母様の派閥の、年上の、それも高位貴族の奥様方とわたくしは話が合わないのに。わたくしが下位貴族出身だからと冷たい目で見るイジワルな人達の集まりなんて行きたくないわ。
それに、わたくしがお出掛けするとセディーが可哀想じゃない。ただでさえ、病気で心細いのに。わたくしが側から離れたら、寂しくて不安に決まっているわ。
わたくしが断っても断っても、お義母様はお誘いをやめてくれない。
困っていたらエドガー様が、
「母上がそんなに交流を持てというのなら、僕の友人の奥方のお茶会に行けばいい」
と、ご友人の奥様が主催するお茶会にわたくしを招待してくれたの。
最初はあまり乗り気じゃなかったのだけれど、さすがはエドガー様のご友人の奥様ね。
お義母様の選ぶお茶会とは違って、身分差やマナーに煩い方達でなくて、皆さん優しい方ばかり。
わたくしのつらい気持ちを親身になって聞いてくれて、アドバイスまでしてくれる。それに、いろんな噂まで教えてくれる。とってもいいお友達ができて、有意義なお茶会だったわ。
何度か、お友達とお茶会をして――――そして、お友達が言い難そうにして教えてくれたの。
「メラリア様は『病弱な長男ばかり可愛がって、次男を祖父母へ預けて面倒も見ない酷い母親だ』って。そんな噂を聞いたの。もちろん、わたくしはそんな噂は信じていませんけど……もしかして、メラリア様からお子様を取り上げた侯爵夫妻が、そんな風に噂を流しているのかしら?」
と、心配そうなお顔で話してくれたの。
正直に言って、わたくしはとってもショックで酷く傷付いたわ。
お義母様がうちから無理矢理ネイトを連れて行ったのに。まるでわたくしが悪い嫁であるみたいな噂を流すだなんて・・・お義母様は、そんなにもわたくしのことが嫌いだったのね。
そして、わたくしは決意したの。
「ネイトを取り戻したいわ」
そう呟くと、お茶会に参加していたお友達が今から侯爵邸に行ってネイトを連れ戻したらいいのではないかしら? と、提案してくれたの。
「ハウウェル侯爵夫人は、今の時間は余所のお宅のお茶会に参加している筈だから。お子様を取り戻すなら、今しかないわ。わたくし達も協力しますから」
と、応援してくれたの。
お茶会を早々に切り上げて、ハウウェル侯爵家にみんなで向かったわ。
母親が子供を取り戻しに来たというのに、邪魔しようとする侯爵邸の使用人達。お義母様の味方の彼らになんか負けないわ!
「ネイトはわたくしの子よ! うちに連れて帰ります!」
と、強く命令して、お義母様からネイトを取り戻すことに成功したのだけど――――
ネイトはお義母様に育てられたせいか、
「わたくしがネイトのお母様なのよ!」
幾らそう言っても聞いてくれない。泣き喚いて、本当に大変だったわ。
侯爵家でネイトの乳母をしているという使用人が勝手に馬車に乗り込んで付いて来て、ネイトを抱き上げてからはどうにか泣き止んでくれたけど・・・
酷いわ。わたくしがネイトのお母様なのに。わたくしからネイトを取り上げて、ネイトがわたくしを嫌うように仕向けるだなんて・・・
それに、ネイトはセディーと違って聞き分けが悪い。セディーが二歳の頃には、もっと大人しい子だったのに。泣き喚いて手が付けられない。仕方ないから、ネイトは侯爵家から来た乳母に任せることにした。
どうしてこんなことになったのかしら?
ネイトがわたくしのことを嫌っていても、ネイトのお母様はわたくしなの。これからは、わたくしがネイトを育てて行くわ。
そう、思っていたのに――――
ネイトは、セディーとはまるで違ったわ。
あちこちちょろちょろ動き回って、ちっとも大人しくしない。セディーは三歳で字が読めるようになったのに、ネイトは簡単な単語すら読めない。
やっぱり、お義母様が育てたからかしら?
いつまで経っても、わたくしに懐かない。
セディーも相変わらず、寝込むことが少なくない。
そうやって四苦八苦していたときだった。
偶々エドガー様のお休みと、セディーの体調のいい日が重なった。
よく晴れた気持ちいい日だからと思い立って、ピクニックに行こうなんて考えたのが間違いだったのね――――
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