ふふっ、ハウウェル先輩が開き直ってますよ。



 そして、別荘に戻って昼食後。


 ピアノの置いてある広い部屋にて。


「・・・ねぇ、本当にやるの?」

「勿論。ね、エリオット」

「はいっ! セディック様とケイト様の為なら、女性パートを踊ることくらい朝ごはん前です!」

「えっと、僕、本当にあんまりダンスが得意じゃないし、足とか踏んじゃうかもしれませんよ?」

「大丈夫ですっ。レイラちゃんによく足踏まれてたので慣れてますっ。どーんと来いですよっ!」

「でも、躓いたり転んだりしたら……」

「大丈夫です。僕は男ですし、こう見えても結構頑丈なんですよ? むしろ、セディック様が転ばないよう支えますから安心してください!」


 ふふんと胸を張るエリオット。


「セディー? 折角せっかくエリオットが付き合ってくれるって言ってるんだから、ぐだぐだ言わないの」

「はい。では、よろしくお願いしますね? エリオット君」

「任せてくださいっ!」


 と、あんまり気の進まないセディーと、なぜかやたら張り切っているエリオットの組み合わせでダンスの練習。一応、セディーが男性パートで、支えると言ったエリオットが女性パートだ。まぁ、リードするのはエリオットの方だけど。


 ちなみにわたしはピアノ要員。ピアノはあんまり上手くないけど、音が無いよりはマシだろう。


 ホールドしている二人を見て、鍵盤を叩く。


 タンタンタンとステップを踏む音に、


「大丈夫です、セディック様。そんなに緊張しないでください、リラックスです。間違えてもいいんですよ? ケイト様が言ってたじゃないですか、楽しく踊ることが一番。姿勢やステップは二の次だって」


 セディーの緊張を解そうとするエリオットの楽しげな声。


「ほら、セディック様。音楽をよく聞いてください。一、二、三。一、二、三。はい、できてますよ~。……あ、今、ハウウェル先輩が音飛ばしましたね~」

「あ、本当だ」

「でも、しれっと演奏続けてますよ」

「ふふっ、そうですね」


 クスクスと笑みを含んだ声。


「ピアノはあんまり得意じゃないんだから仕方ないでしょ」

「ふふっ、ハウウェル先輩が開き直ってますよ」

「ふふっ」


 和やかな雰囲気になり、曲が終わった。


「さて、ピアノが残念なのは諦めてもらうとして。もう一回踊れる? セディー」


 二人の様子を見ると、思ったよりもセディーが息を乱していない。


「え? あ、なんか行けそうかも? なんでだろ? いつもは、一曲踊るだけでへとへとになるのに……?」


 不思議そうに首を傾げるセディー。


「あ、もしかしたら、いつもはもっとガチガチに緊張して余分な力が入っちゃってるかもですね~? 僕も、おばあ様や姉様達と踊るときには、一曲踊るだけでも結構くたくたになりますし」

「ぁ~・・・なんかわかるかも。おばあ様と踊るときには、やっぱり怪我や転倒が怖いもんねぇ。そっか、セディーはいつもおばあ様と練習してるから」


 確かに、それは神経を使うかも。


「まぁ、エリオットは男だから雑に扱ってもいいとして」

「はいっ。僕は男ですからねっ」


 嬉しそうに応えるエリオットに、


「え? ネイト? エリオット君?」


 戸惑うようなセディー。


「どうする、セディー? 休憩するか、続けるか」


 聞いたとき、


「なになに? 三人で演奏会でもしてんの?」


 そう言ってテッドが入って来た。


「……今の曲はあまり上手くはなかったが」


 チラッとこっちを見た、リールも一緒に。


「そうかー? 普通じゃね? で、次なんの曲弾くん?」

「演奏会じゃなくて、ダンスレッスンですっ」

「え? マジ?」

「あ、そうです。お二人はピアノか他の楽器でもいいので、演奏できますか?」

「あ、俺無理ー」

「……一応、少しだけなら」

「それじゃあ、ピアノをお願いします」

「……わかった。交代」

「それじゃあよろしく」


 リールと交代。


「僕、いいこと思い付いたんですよっ」

「お、なになに?」

「セディック様がネヴィラ様とのダンスで神経を使うのなら、ハウウェル先輩と踊ればいいんです!」


 ふふんと胸を張るエリオット。


「え?」

「というワケで、ハウウェル先輩も女性パートを踊れるようになりましょうっ!」


 そう来たか・・・


 きらきらした瞳でわたしを見上げるエリオット。


「プハッ! いいじゃん、やれよハウウェル~」


 ニヤニヤと笑うテッド。


「えっと、それって……」


 わたしを伺うように、けれどどこか期待の籠るようなセディーの眼差し。


「・・・はぁ~」

「嫌、だよね……? ごめん、ネイト」

「いいよ」

「え? いいのっ!?」

「うん」

「さすがハウウェル先輩ですっ」

「いや~、さすがなのはフィールズの方だと思うぜ?」

「ふぇ?」

「つか、なんでこんなおもし……じゃない、めっちゃ面白いこと思い付いたん?」


 ワクテカ顔での質問。ははっ、この野郎……本音が全く隠れてないじゃないか。


「えっと、その……僕がハウウェル先輩に教えられるような機会って、そうそうないので……」


 頬を染め、エリオットがもじもじと答える。


 相変わらず、なんかズレてるよな。コイツは・・・


 「美少女な顔が 美女な顔に 告白の図っ!?」


 なんか、アホな呟きがしたような?


「ま、いいけど。で、なに? 君にリードされて覚えろってこと?」

「が、がんばりますっ!! それじゃあ、セディック様。見ててくださいね?」


 と、いつもの癖でエリオットをホールドしようとして、


「ハウウェル、逆だぞー」


 テッドの野次が飛ぶ。


「ああ、そうだった」


__________



 おまけ。



 テッド「そう言や、フィールズってハウウェルの顔好きだよなー。なんでなん?」(*`▽´*)


 エリオット「なんでって聞かれても困りますけど、でもハウウェル先輩のお顔は好きですっ!」(*>∀<*)


 テッド「ぷっ……なんかめっちゃ好かれてんぞ、ハウウェル」(*`艸´)


 ネイサン「まぁ、わたしの顔はターシャおば様にも好かれてるからね」( ・∀・)


 エリオット「ハッ! そう言えば、お母様もフィオレ様のことが好きって言ってました!」( ≧∀≦)ノ


 テッド「フィオレ様って誰?」(´・ω・`)?


 セディー「ああ、僕達の伯母おば様のことだね。ネイト程じゃないけど、顔はおばあ様と少し似ているよ?」(^∇^)


 リール「……親子三代揃って、顔の好みが似たのか」( ̄~ ̄;)


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