感涙にむせび泣いてもいいんだぜー?


 テストの採点が済んだとのことで、返って来ましたよ。テストがっ!?


 そして・・・


「で、どうだったよ?」


 神妙な顔で聞いたテッドが、


「ちなみ、俺とレザンは普通クラスキープだぜ!」


 イェーイと笑って言った。


「うむ。思ったよりも、点数が取れていてな」

「下位クラス落ちしなくてよかったね。わたしの方も、来年度は普通クラスだよ」


 テスト結果としては・・・悪くはなかったと思う。まぁ、わたし基準では、だけど。


 ほら? 在学中ずっと十位以内をキープしていたセディーと比べちゃいけないよね? うん。一応ちゃんと、普通クラスはキープしたし。


「おいおい、そこはもっと喜ぶとこだろ? 来年も一緒なんだぜ! もっとこう感動するなり、お前はよくがんばった! って感じで誉めるくらいしろよなー、ハウウェル」

「誉めるって言われても……」


 一緒に勉強していて、「飽きたー」と言ってペンを放り投げてリールにどやされていた奴の、なにをどう誉めろと言うのだろうか? ちょっとよくわからないかな。


「アホか。普通に授業聞いてれば普通クラス程度余裕だろ。むしろ、ギリギリだったことを反省しろ」


 やれやれという風なリール。というか、普通クラス程度・・って・・・さすがは特待生ということか。優秀だな! 言い方がなんかちょっと鼻に付くけどね。


「リールってば冷たいっ!? ハウウェルはそんなこと言わねーよな! ほら、感涙にむせび泣いてもいいんだぜー?」

「いや、別に感涙する程は嬉しいワケでもないし。というか、レザンはかく、テッドも普通クラスギリギリだったの? ある程度の余裕は大事だよ? 来年度とか、どうするつもりなの?」

「ハウウェルも冷たいー。もーやだこの二人ー、俺がんばったじゃんよー。この学校レベル高いんだってー。この優等生共めっ!」

「それは誉めているのか?」


 不満げに管を巻くテッドに、ツッコミを入れるリール。


「あと、俺は特待生だが、普通クラスのハウウェルも優等生なのか?」


 まぁ、自分でも優等生だとは思っていないけど、相変わらず失礼だな。この野郎は。


「誉めてねーし。優等生的な回答ってやつだよ!」

「来年度、か・・・」


 そして、遠い目をするレザン。レベルが高いのは事実なんだけど。ホント大丈夫か? コイツら、なんて思っていたら・・・


「あ、そうそう。そうなんだよ。ライアン先輩には、めちゃくちゃお世話になったからなー。だから、なんかしようと思います」


 と、テッドが言った。


「そうだな。ライアン先輩には、大変お世話になった。是非ともその恩を返したいと思う」

「まぁ、そうだね」


 主に、お世話になっていたのはこの二人だ。


「確かに。ライアン先輩にはお世話になった。けどお前、俺の話を逸らしてないか?」

「そんなことはない!」


 きっぱりと断言するテッド。けど、その顔はリールから逸らされている。どうやら、そんなことはあるようだ。別にいいけど。


「それで、なにをするつもりなの?」

「そりゃあ、オーソドックスにお別れ会とか、卒業おめでとう&めっちゃお世話になりました! なパーティー? あ、もちろんお前らは強制参加な? 付き合わないとか言わせねーからな? リール」

「俺だってライアン先輩にはお世話になったんだ。当然出るに決まってるだろ」


 ムッとした顔で返すリール。


 ライアンさんは、「卒業試験も余裕なので大丈夫ですよ」と豪語する上位クラスの先輩だけあって、特待生のリールにも普通に勉強を教えていましたからね。


 それにしても……


「お別れ会、か」

「ん? どったよ、ハウウェル?」


 思わず呟いたわたしを見やるテッド。


「あ、いや……」


 ライアンさんは卒業したらセディーが雇うって言ってたから、わたしはうち・・に帰れば普通に会えると思うんだよねぇ。もしかしたら、お祖父様の家に住み込みになるかもしれないし。


「なんだなんだハウウェル、言いたいことがあるなら言えよなー」

「う~ん……わたしの一存で言っていいことなのか判らないから。とりあえずは、お別れ会じゃなくて卒業パーティーの方向で」

「ああ、そう言えば確か、ライアン先輩は卒業後にセディック様に雇われるのだったな。だからハウウェルはお別れではないというワケか!」


 成る程、とレザンが言った瞬間、


「なんだとっ!? ということはあれかっ!! ハウウェルだけ来年からもライアン先輩に勉強を教わることができるってことかっ!? しかもしかも、めっちゃ優秀なおにーさんにも勉強教えてもらえるとかズルいじゃねーかよこの野郎っ!!」


 詰め寄って来たテッドに両肩を掴まれた。


「いや、ちょっ、近いからっ!?」

「落ち着け、テッド」

「なんだよレザン! ハウウェルだけズルいじゃねーかよー」

「ライアン先輩がセディック様に雇われるということは、ハウウェルの家に行けば、ライアン先輩に会えるということだ」

「おー、なるほど! よし、今度遊びに行こう」

「は?」

「……それなら俺も行く」


 ぼそりと便乗しようとするリール。


「いや、わたしOKしてな」

「よーし、それじゃあライアン先輩の卒業パーティーのことを決めようぜ!」


 笑顔でわたしの言葉が遮られた!


 こうして、ライアンさんの卒業パーティーを画策することが決まった。


 コイツら、マジでうちに来る気なのだろうか?


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