セディーのことを好きそう?
セルビア伯爵家からの帰り。
途中で、ぬいぐるみを売っている店へ寄ってもらうことにした。
「スピカちゃんへなにか贈るの?」
「そうだねぇ・・・いいのがあったら、贈りたいかな? でも、今日はリヒャルト君に鳥系のぬいぐるみを贈ろうかと思って」
「鳥のぬいぐるみ? リヒャルト君は、鳥が好きなの?」
「う~ん……まぁ、リヒャルト君が鳥が好きなのかはわからないけどね。さっき、リヒャルト君に雛がいると思しき鳥の巣を覗かせてあげたんだ。そしたら、ピィピィ鳴いてる雛がよっぽど可愛かったのか、抱っこしてなでなでしたいって言ってたからさ? 鳥の巣に突撃しないかちょっと心配で。ぬいぐるみでもプレゼントしたらいいかな? って思って」
「鳥の雛? 可愛かった?」
「わたしは見てないからなぁ……」
「? どうやって鳥の巣を見せてあげたの?」
「肩車で。ひょいって乗っけて。だから、わたしは見てないよ」
「か、肩車……」
「? どうかした?」
「いや、なんでもないよ。想像したら、微笑ましいなって・・・重たくなかった?」
「大丈夫だよ。リヒャルト君は小さいから」
「そっか・・・」
なんだか寂しそうな顔をするセディー。
「? どうかしたの?」
「ううん。それより、どんなぬいぐるみを選ぼうか?」
「んー……ふわふわした、触り心地がいいのとか? ぽわぽわの雛をなでなでしたいって言ってたから」
「そっかぁ、それじゃあ、可愛くてふわっふわのぬいぐるみを選ばなきゃね」
と、セディーと二人で、リヒャルト君へプレゼントするぬいぐるみをああでもない、こうでもないと言いながら選んだ。
結局、セディーとわたしで一羽ずつ選んで、二羽のひよこのぬいぐるみをリヒャルト君へ贈ることにした。
ちなみに、スピカには子猫のぬいぐるみを贈ることにした。ひよこだとリヒャルト君とお揃いになるから、それはなんかわたしが嫌だったから。
「喜んでくれるといいね?」
「うん」
そして、プレゼントをそれぞれの家に届けてもらうよう手配をして帰った。
うちに着くと、
「婚約は、受けてもらえました」
待っていたお祖父様とおばあ様にそう報告。
「そうか。よかったな、セディー」
「はい」
「それで、どんなお嬢さんなのかしら?」
なぜか、セディーではなくわたしへ聞くおばあ様。
「? セルビア嬢は、とてもいい方ですよ? 凄く
まぁ、ブラコンだけど。
「そう、それで? セディーのことを好きそう?」
「え?」
「セディーは教えてくれないのよ。どうなの?」
わくわくした顔で尋ねるおばあ様に、思わずフリーズしてしまう。
・・・セルビア嬢が、セディーのことを好き?
今日、セディーがセルビア嬢に婚約を申し込みに行って、受けてもらえた。
二人で話して決めたというけど・・・その割に、二人の様子はいつも通りだった。
セルビア嬢が頬を染めてうっとりしている顔や、慈愛に満ちた微笑みを浮かべているのは見たけど、それは全部リヒャルト君へと向けられていた顔だった。
セルビア嬢がセディーへ向ける顔は、いつもと同じ冷静な顔で・・・
ああいや、わたしとリヒャルト君が仲良くしている姿が尊いだとかセルビア嬢が言って、セディーがそれに同意したときにはとても嬉しそうな顔をしていたけど・・・
セルビア嬢が、セディーを好き・・・?
「・・・」
でも、婚約は受けてもらえて・・・多分、嫌いではない、よね?
セディーが自分から、セルビア嬢がいいと言って選んだ人だけど・・・
「あら? 違ったの? 残念ねぇ」
「ふふっ、僕達の場合は、惚れた腫れたの関係というよりは、信頼関係ですからねぇ。色っぽい話は、まだまだ先と言ったところでしょうか?」
ちょっと残念そうなおばあ様に、セディーが答える。
「そうなの? それはそれで、これからが楽しみねぇ」
「では、ケイトさんを
「任せてちょうだい」
「あ、そうだ。ケイトさんと婚約するに当たって、決めて来たことがあるんです」
「なにを決めて来たの?」
「ケイトさんの好きなときに里帰りをしていい、と。そう約束しました」
う~ん・・・セルビア嬢はリヒャルト君ラブですからねぇ。さもありなんという気がする。
「なに? それはどうかと思うぞ」
セディーがしたという約束に、渋い顔をするお祖父様。
「まぁ、婚家にずっといるのも気を遣うものね。セルビア家とは、そんなに距離が離れているワケでもないから。いいんじゃないかしら?」
「おばあ様なら、そう言ってくれると思ってました」
「しかしだな、家に帰っても奥さんがいないと寂しい思いをするぞ?」
「あら? わたしが里帰りをしている間、寂しかったの? ヒューイ」
「い、一般的な意見だ! それに、しょっちゅう里帰りをされると、不仲だと疑われることもある」
「そういうときには、迎えに行けばいいのよ」
「むぅ・・・」
「婚約に当たっての条件に盛り込みましたからね。今更
セディーがそう力説すると、
「セディーと同じくらい?」
ぱちぱちと瞬くペリドットの瞳。
「まぁ、セルビア嬢は、リヒャルト君ラブですねぇ」
「はい。弟さんのリヒャルト君を可愛がってくれない相手は、願い下げだと断言するくらいには」
「・・・そうか。まぁ、頑張るといい」
ぽん、と励ますようにお祖父様がセディーの肩を叩きました。
多分、里帰りの件は了承したということでしょうか?
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