嬉しそうに見えるのは俺の気のせいか?
「構わん。ふっ、セディーの悔しがる顔が目に浮かぶようだ」
ニヤリと少し意地悪そうに笑い、
「? セディーの悔しがる顔?」
ふふんと胸を張るお祖父様。
「セディーには、貫禄と経験と人脈と場数が圧倒的に足りんからな。そんな若輩者には、まだまだ家督を譲るわけにはいかん」
「そうですか」
「そうだ。おじい様に任せておけばいいのだ」
ふん、と鼻を鳴らした後に、
「……なにも、若いのに好き好んで要らん苦労を背負わんでもいいだろうに……全く、いつの間にかあんな強情になりおって。誰に似たのやら」
不満げな呟きが落ちる。
なんだかんだ、お祖父様もセディーのことを心配しているんですよねぇ。言い方は若干……いや、あんまり? 素直じゃありませんし、セディーに妙な対抗意識もあるみたいですけど。
「ふふっ」
思わず笑ってしまうと、
「なにがおかしい?」
お祖父様が怪訝そうにわたしを見ます。
「いえ……強情なのは、お祖父様に似たのでは? と思って」
「いいや、セディーが頑固で強情なのは、絶対にネヴィラに似たのだ」
やけにきっぱりと言い切るお祖父様が面白い。
「どっちでもいいじゃないですか」
「よくないぞ。わたしよりも、ネヴィラの方が強情なんだからな」
そうですかねぇ? セディーがああ見えて、実は結構情熱的だったりするのは……一目惚れした外国のお嬢さんに突撃プロポーズをして、見事結婚したお祖父様譲りだと思うんですけどね?
「お祖父様とおばあ様の孫なんですから、両方に似てて当然でしょう?」
「・・・むぅ・・・まぁ、いい」
お祖父様、不機嫌を装っていますが、口元が嬉しそうですよ。
「そんなことより、ネイト。今週末は帰って来なさい。金曜にうちの馬車を回すから、ちゃんと校門から馬車に乗って帰って来ること。これは命令だ」
「渋滞が・・・」
「我慢しなさい。騎士学校を卒業して、多少剣が扱えるとは言え、お前はまだ子供なんだ。あまりネヴィラやセディーを心配させるな」
「はい、わかりました」
「宜しい。では、授業を頑張って来なさい」
そう言って、お祖父様は帰って行きました。
✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐
夕食時、食堂にて。
「というワケで、わたしは金曜は家に帰ることになったので、残念だけど君の相手はできなくなってしまったんだ。悪いね、レザン」
まぁ、むしろコイツの相手をしなくていいのはラッキーだけど♪
つか、コイツの相手をした後に帰ったら大変なことになりそうな気がするし。主に、セディー辺りが卒倒しそうな気がする。
「嬉しそうに見えるのは俺の気のせいか? ハウウェル」
探るようなレザンの視線に、
「気のせいだな」
しれっと返す。
「そうか。まぁ、丁度いいかもしれん。俺も、実家に帰るようにと、さっき兄貴からお達しがあってな。だから、別に週明けでも構わないぞ」
チッ……やっぱり無しにはならないか。残念だ。仕方ない。
「週明けは勘弁しろ。君とやり合ったら、その当日から筋肉痛や打ち身で身体ギシギシになるんだよ。週末以外はわたしが嫌だ」
「全く、我儘だな? ハウウェルは」
「体力おばけの君と一緒にしないでくれないか? わたしは一般人なんだよ」
「ハハハっ、相変わらずハウウェルは面白いな」
なぜか笑い飛ばされたっ!?
「・・・とりあえず、君とやり合うなら、帰らないときの週末だ。それ以外はお断り。怪我して帰ったら、心配させるから」
ついさっき、お祖父様におばあ様とセディーに心配を掛けるなと言われたばかりだ。
「ハウウェルは注文が多いな、全く」
やれやれとでも言いたげなレザンに、イラッとする。けど、我慢だ。
コイツ的には、いつどこでわたしの相手をしようが、構わないんだから。
ムカついて殴ったりしようものなら、「ハハハっ、やる気だなハウウェル!」と嬉しそうな顔で殴り返されるのが目に見えている。しかも、どうせ勝てないし・・・
イラつくけど、話を変えよう。
「君のとこは、お兄さんが来てたんだ?」
「ああ、下の兄貴がな」
「なんか言われた?」
「いや? 特になにも。ただ……」
「ただ?」
「保護者の呼び出しというから、覚悟して来てみれば、この程度の問題か。と言って、かなり拍子抜けしていたな。学園側には、なんだったら協力をしてもいいと言って、丁重に断られていた」
「そりゃあね。軍関係者に調査されるってなったら、ビビるでしょ。普通は」
「そうなのか?」
「そうだよ」
レザンの兄上……というか、クロフト家も学園側へ圧力を掛けに来た、ということかな?
まぁ、特になにも考えてなくて、親切で協力すると言ったという可能性がなくもないけど。
学園側は……
調査に手を抜くと、軍関係者が出張って来るかもしれない。そう思うと、今頃学園側の責任者達は頭を痛めているかもしれない。
まぁ、ああいう輩を数年も放置していた付け、でもあると思いますけど。
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