喜んでくれるといいな♪


 二年目には、優秀な成績を取って外泊許可をもぎ取った。頑張った、わたし!


 外泊当日。


 スピカの誕生日プレゼントを買いに行くついでに、なんでわたしを騎士学校になんかに入れたのかと両親を問い詰めようと実家へ向かった。


 やはり父とは顔を合わせることはなく、仕方なく話の通じなさそうな母に聞いてみた。


 すると母は迷惑そうな顔で、


「見る度に剣を振っていたから、ネイトは騎士になりたいのでしょう? わたくしがやめなさいと言っても、全然聞かなかったじゃない。だからネイトの為に、わざわざあの学校を手配してあげたのよ」


 だとか、阿呆なことのたまいやがったっ!?


「あの学校が、どんなところかご存知で?」

「有名な騎士学校なのでしょう? あの学校を出ると、誰でも優秀な騎士になれると聞いたの。よかったわね、ネイト。感謝なさい」

「っ……」


 馬鹿でも一応は女性だ! 冷静になれわたし! と、理性を総動員させて、実家を出た。


 あの人を殴らなかったわたし、本気で偉いと思う。


 ちなみに、セディーはわたしとは別の学校へ行っているので会えなかった。ちょっと残念。


 それから祖父母の家に戻って、スピカへの誕生日プレゼントをおねだりすることにしました。


 スピカはわたしの婚約者だから、プレゼントを贈るのは当たり前! だというのに、あの人ときたらっ……


「クロシェン家には十分なお礼をしたのだから、わざわざこんなおままごとの婚約をしなくてもいいのじゃないの」


 だとか抜かしやがったっ!!


 本っ当にどうしようもないな、あの人は……


 そして、わたしと顔を合わせる気がない父に会いに行ってわざわざ頼むのは、時間の限られているこちらとしては、その手間も惜しい。

 それに、あの人の言ったことに同意でもされたら、それこそ殴らないでいられる自信が無い。父が、あの人に甘いことは知っているし。


 時間を無駄にした気分だ。


 とりあえず、頭を冷やそう。


 ――――ということで、祖父母の家へ向かう。


 生憎とお祖父様はもう出掛けていたので、プレゼントを買う資金と隣国へ送る手配諸々とをおばあ様へお願いして、慌ただしく街へ繰り出した。

 おばあ様にクスクス笑われたのが、ちょっと恥ずかしいっ……でも、とても感謝しています!


 街に出て、あちこち店を見て回る。


 小さな女の子が好むような贈り物はなにがいいのかと、悩んで悩んで……


 スピカの喜ぶ顔を想像して、とあるお店でうさぎのぬいぐるみに決めました。


 喜んでくれるといいな♪


 でも、決めた頃には長時間迷ったせいで閉店が近くなっていた。店員に苦笑されつつ、急いでメッセージカードを書いて、一緒に包装してもらった。


 それを大事に持って、祖父母の家へ帰った。


 兄上のいない実家になんか行きたいとは思わないし、あの人とは冷静に話せる気がしないから。セディーの顔を見られないことは残念だったけど……


 翌日には、慌ただしく学校へ戻った。


::::::::::୨୧::::::::::୨୧::::::::::୨୧:::::::::::


 ――――それから数ヶ月。


 誕生日も寮で過ごしていたら、誕生日プレゼントが贈られて来た。祖父母と、兄上。そして、両親から。と、もう一個は……クロシェン家からだったっ!?


 スピカが、わたしに誕生日プレゼントをっ!?!?


 中身は、深いコバルトブルーの色をした万年筆。深いコバルトブルーは、スピカの瞳の色だ。


 ヤバいっ、滅茶苦茶嬉しい!!!!


 是非ともお礼をしなくては!! と、外泊許可をもぎ取った。けど、またしても悩みに悩んで、慌ただしく……と、以前と同じことを繰り返した。


 手紙を書く時間が足りないっ!? 寮だと検閲が入るから嫌なのにっ……


**********


 そんな風にして、一年、二年が過ぎて――――


 とうとう卒業!! やったね!! アホな野郎共とはおさらば、これで自由だーっ!!

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