3.手詰まりで墓穴を掘る

 いやいや、そんなことよりも今は地底人だと指摘されたことだ。それを何とかしなければ。


「……あのう、地底人って、ゐっ、るのでせうか」


 不味い。これでは焦っているのが丸わかりだ。


「もちろんでちゅ。今ここに居るあなちゃこちょ地底人でちゅから」


 どうやら彼女には何か確信があるらしいのだけれど、ここはひとつ、しらばくれて通すことにするかな。


「今、ここにいるオレっちは、地底人でしょうか。こ、ここは地上のはずです……」


 ここまで云ったものの、もうこれは手詰まりかな。

 しかし、彼女が少し柔らかい表情を見せた。


「そでちゅね、ここは地上でちゅ」

「そうでしょう」

「ちょれで、地上にいるから地底人ぢゃない、と云い逃れるおちゅもりでちゅか」

「……」


 やはりもう手詰まりのようだ……。

 光跳ねる白い肌。光微睡む黒い髪。寿司天麩羅国の女性はみんな綺麗だけど、この子は格別だな。

 あいやいや、まただ。いけないいけない。今はそんなこと思っている場合じゃないのだから。


「どかちまちゅたか」

「そ、それは、そのう……」

「ま、いでちゅ。あなちゃが地底に戻るか、何かやり取りちゅるか」

「……」

「そんな瞬間をちっかり押さえてあげまちゅ」

「……」

「あなちゃが地底人とゆう尻尾をちゅかむためでちゅ」

「あの、その、オレっちらも地上の人たちと同じく尻尾は退化して……あっ」


 しまった。でも、もう遅い。今のようなのが、自ら墓穴を掘る、てことか。これでオワリだった。


「きゃははは、うっかり口を滑らちぇまちたでちゅ」


 まったくだ、情けないなぁ。穴があったら入りたい、じゃなくて地底あなから出てきてまだ四日しか経っていないと云うのに……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る