急がば回れ

「丁度いい。さっきの話の続きだ」


「さっきの話?」

「僕のエクセレントな特殊能力を君に説明している途中だったろう」

「それは……そうだったけど『丁度いい』ってなに?」

「見ていたまえ」


 忠孝はワキワキと六本足でもがくミヤマクワガタを地面に置いた。

 そして地面でクワッと大顎を広げ威嚇の姿勢を取るミヤマクワガタの背中に、二本指を添えた。


「ちょっと何する気?」

「いいから。僕は小さな命を無為に奪ったりはしないよ」


 そのまま眼を閉じて精神を集中する。


「サティ、シュリー、アカーラ。アプカ、ナム、ギア・ハェ……」


(聞いたことのない詠唱……どこの言葉?)


「ハァッッッ!!!」


 高らかに気合いの声が響くと、忠孝の指の下のミヤマクワガタがクルッ!っと凄い勢いで180度回転した。


「見たか! 触れて念じた対象を任意の角度で瞬時に回転させる! これが僕の持つ異能、その名も……あっ、待て。まだ話は終わってないぞどこへ行く⁉︎」

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