渡りに船

 その時だ。


 カランコロンカラン♬


 どこか間抜けた音色でドアベルが鳴った。

 来客だ。

 言い争っていた二人は同時に振り返った。


「あの……」

「こんばんは。ご相談ですか?」


 先にそう言ったのは忠孝だった。

 タエは「コイツ……‼︎」という顔をしたが、客の手前での言い争いは得策ではないと自分を律して、歯を食いしばって黙った。


「こちらは、除霊事務所で宜しいんですよね?」

 そう不安そうに尋ねる男は、歳の頃は三十前後といった眼鏡を掛けた真面目そうな風貌で、手入れされたスーツを来たサラリーマン風の服装、そしてタエがカッコいい、と思う程には男前だった。

「もちろん。実績と信頼の黒金忠孝除霊事務所。私が所長の黒金忠孝です」

「助けてください!!!」

 

 相談者は切羽詰まった様子で忠孝にしがみついた。


「生徒が、旧校舎の解体現場で消えてしまったんです!」

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