へい、タクシー

バブみ道日丿宮組

お題:マイナーなパイロット 制限時間:15分

へい、タクシー

「それで行き先はどちらで?」

「北海道の墓地へお願い」

「墓地って……神社かなにか名称はないのですか? ほら、恐山とか、金閣寺とか? まぁ金閣寺は墓地ではないですが……」

「ないわ。だから墓地に行って」

「わかりませんが一応検索してみましょう。どれどれ……いやぁさすがにたくさんでてきますね。墓地といえば、大きなところか、歴史があるところか……迷いますね」

「墓地っていえばわかると、お母様は言ってたわ」

「それはおそらく専属契約してる運転手かなにかだと思いますね。他に特徴とかないんですか? ゆかりがあるとか、歴史があるとか、誰かのお墓があるとか」

「お墓はあるわ」

「どなたの?」

「お祖母様の。お線香をあげにいきたいの」

「……そうですか。ちなみに名前はなんていうんですか?」

「加藤一」

「ありふれてる名前ですね……。一応スマホでも調べてみますね。うーん……うーん? あーん。ダメですね。候補が多すぎます」

「それでもお願い」

「客に頼まれた場所に行くのがこのヘリコプター運送のもっとうでございますがね。わからないことはわからないんです」

「他の人に変わってもらって」

「それでもですよ。お嬢さん。世間体を知らなすぎますよ」

「そう? これでも生徒会長よ」

「そら良かったですね。でも、行き先がわからない限りは生徒会長だろうと、不良だろうが、天才児だろうが扱いは一緒ですよ」

「……行けないの?」

「北海道までなら連れて行けますが、それ以上はこちらからどうすることもできません」

「ここのパイロットたちは優秀だとネットで書かれてたのだけど」

「さすがに厳しすぎますよ。データがありません」

「……わかったわ。北海道までいって」

「ヘリコプター使うより、飛行機のが安いと思いますがね」

「なんなの? 私はお客よ。お金は払うんだから、したがってよ」

「運転手であっても従者ではないのですよ。だから、ご命令されても従えません」

「教育がなってないわ」

「いやいや……そういうものでもないですよ」

「はぁ……人混みが嫌いなの」

「でしたら、家の従者に……ってか、お嬢様なんですかね?」

「そうよ」

「でしたら、その従者に頼むのが一番はやいと思いますよ」

「……黙って出てきたの」

「そういうあれですか。はぁ……わかりましたよ。できる限り付き合いましょう。北海道全ての墓地という墓地をまわれば、それらしいものにヒットするかもしれないですね」

「お願いするわ」

「ーーこういうのはベテランがやるもんなんだけどな」

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へい、タクシー バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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