☆続 神と共に歩む元風俗嬢と元アウトローの十字架 

すどう零

第1話 今こそ人生やり直し

 私、桃木きらら、二十三歳になったばかり。

 実はつい昨日まで、人気風俗嬢で、風俗雑誌にも掲載されたちょっとした有名人だったんだよ。

 でも、元アウトローの信田さんと出会い、クリスチャンになり、今まで貯めた一千万円で、小さな弁当屋を開業している。

 

 ほんというと、顔がさすのが怖くて、私は外出するにも、マスクと帽子をして顔を隠していたんだ。

 だって、私、風俗雑誌にも掲載された人気風俗嬢だったからね。

 昔の客に声をかけられたどう対応したらいいんだろう、また、雑誌で私の顔を覚えている人もいる筈だといっても、私は芸能人のように個性的な顔でなく、風俗店では厚化粧していたから、とぼけることもできたけどね。


 私の唯一の救いは、性病にかかっていないことだった。

 実際、そうなると免疫力がなくなって風邪をひきやすくなり、体力も低下し

2キロくらいの荷物も持ち上げられなくなる。その時点で、日常生活は過ごしにくくなる。

 また、性病が頭に回ると、被害妄想になった挙句、妙に攻撃的になり、人にケンカを売ったりするという。

「あんたはバカだから、こういうこともできないんだね」

 またひどい客のことを思い出し、急に椅子を振り回して暴れたり、顔見知りの腕を引っ張ったりするという。

 これが嵩じると、今度は覚せい剤中毒ではないかという疑いをかけられるという、悪循環に陥る。

 私は、そうならなくてラッキーだったな。

 まあ、私は今でもサービス精神旺盛だから、どんなに合わない人でも、褒めておだてるという人心掌握術を心得てるけどね。 


 ある日、信田さんに言われたの。

「俺も実は、昔は相当な悪事を働いていた。風俗嬢のヒモを何人か持ち、暴力で金を貢がせたりして、それを組に納めてたんだ。そうしないと組から借金ということになるからね。しかし、今はその必要がなくなり、自由の身に解放されて、顔つきまで別人の如く変わったよ。ちなみに、俺のアウトロー時代の写

真、見せようか」

 信田さんが見せてくれた写真を見て、私はギョッとした。

 目が吊り上がり、唇はひん曲がりとにかく人相が悪い。

 まるで、悪役メイクをした中年俳優のようである。

 目の前の温厚そうな信田さんとは、まるで別人。やはり言動は顔つきにでるのかなと痛感したわ。


 元ヤクザ同志を集めた伝道集団ミッションバラバの一員の、実年男性は

「私は昔、鬼のような人相の悪い顔でした。それがアウトローを辞めた今、ニコニコしてるでしょう」

 信田さんも同じパターンに違いない。

「俺は、牧師になりたいといってアウトローの組を正式に脱退したけど、なかには、正式な形で脱退していない元アウトローもいる。

 また、三昔、有名アウトロー組長の命を狙ったアウトロー組長もいる。

 そういう奴らは、今でも命を狙われ、もしかしたら、拉致され港湾に放り込まれるかもしれない。それを覚悟で、伝道しているんだよ」

 私は驚いて絶句した。

 私でさえも、顔を隠しておきたいのに、それ以上に命を狙われながらも、神を伝道するとはなんという度胸だろう。

 いや、神というのはなんと偉大で、人を強く変えて下さるのだろうか!


 


 

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