傭兵基地制圧戦

……………………


 ──傭兵基地制圧戦



 マーヴェリックたちは基地の斜面側の壁に向けて対戦車ロケット弾を叩き込んで穴を開けた。そこからマーヴェリックたちが侵入していく。


 敵が応戦するためにマーヴェリックたちの方に向かってくるが、斜面から発射される迫撃砲弾によってその動きは制限された。


 マーヴェリックたちは的確に敵を撃ち抜いていきながら基地施設に飛び込む。


 基地施設なはキルハウスになっており、ここでシュヴァルツ・カルテルの兵士たちが室内戦の訓練を受けていたのは明白だった。それも人質と敵役には実際の人間が使われていた。蜂の巣になっている警官や軍人の死体が残されている。


「へえ。連中もなかなかやるじゃないか」


 マーヴェリックは感心しつつ、敵基地施設内を制圧していく。


「手榴弾!」


 閉所では容赦なく手榴弾を使って、敵を制圧し、機関銃の援護射撃の下で室内を掃討する。マーヴェリックたちにとってはなれた仕事だ。


「傭兵はいないな」


「油断しない。まだ入ったばっかり」


「はいはい」


 マーヴェリックとマリーはお互いをカバーし合いながら進んでいく。


「正面。キルハウス出口。敵複数」


「焼いてしまったら?」


「そうする」


 マーヴェリックは敵に向けて炎を放つ。


 敵は燃え上がり、ばたばたとのたうちながら大火傷を負って死んでいった。


「ちょろいもんだな」


「油断大敵」


「了解」


 マーヴェリックたちはキルハウスから基地施設内に入る。まだ武器弾薬庫も、傭兵も見つからないが、敵だけはたっぷりといる。


 敵は基地施設内に魔導式重機関銃陣地を構築したり、単にバリケードを展開したりして抵抗してくる。傭兵に訓練されたのだろう。陣地の構築はしっかりしていたし、射撃の腕前も悪くなかった。


「スタングレネード」


 だが、『ツェット』相手には分が悪い。


 マーヴェリックたち『ツェット』は鍛え抜かれた精鋭だ。ここ最近、訓練を受けたばかりの連中とは違う。彼女たちは鍛え抜かれていると同時に実戦経験が豊富なのだ。


 実戦経験は重要だ。実戦と訓練はやはり違う。どれだけ訓練を実戦に近づけても、実戦そのものには及ばない。実戦経験は実戦でしか得られず、実戦経験のある兵士とそうでない兵士は、引き金を引く速度から状況判断まで異なる。


 今のところ『ツェット』は実戦経験の差で押していた。数では負けている。彼らが優位に立つには己の経験を活かすしかなかった。


「対空ミサイルは確認できずとのこと!」


「よっしゃ。航空支援を呼ぶぞ」


 そして、今、火力の面でも敵を上回ろうとしていた。


 ガンシップが次々に飛来し、地上部隊の指示合わせて機関銃やガトリングガンを掃射する。装甲車部隊の前進を妨げていた敵の地上部隊のCOIN機が投下したナパーム弾で薙ぎ払われ、装甲車部隊が一気に前に出る。


 正門から押され、裏口から押され、シュヴァルツ・カルテルの兵士たちは挟み撃ちにされた。逃げ場はなく、建物に立て籠もるのみ。


 建物に立て籠もっても外からガンシップが猛烈な火力を浴びせる。防衛線は内側へ内側へと後退していくばかりである。


 マーヴェリックたちもここぞとばかりに仕掛ける。


 手榴弾を使い、スタングレネードを使い、スモークグレネードを使い、室内戦を次々にこなしていく。敵は散発的な抵抗を示すだけで、もはや組織的な抵抗は不可能なように思われていた。


 だが、室内に一か所だけ、猛烈に抵抗し続けているところがあった。


「すげえ抵抗だな。弾幕張ってやがる」


「いいから焼いて」


「はいはーい」


 マーヴェリックが陣地を作って抵抗している兵士たちに炎を放とうとする。だが、バリケードが邪魔になっていて、一部の攻撃が防がれ、バリケードが燃え上がり始めた。バリケードの発火を完治して火災報知器がなり始め、スプリンクラーが作動する。


「畜生。最悪」


「文句言わない」


「分かったよ」


 残りの敵に向けてマーヴェリックとマリーが手榴弾を投擲する。陣地で爆発が生じ、悲鳴が上がる。だが、次の兵士がやってきて死体をバリケードにし、抵抗を続ける。


「きりないぞ」


「一気に突破する?」


「賛成。対戦車ロケット弾!」


 対戦車ロケットを装備した兵士が前に出る。室内でも使えるように改良したモデルだ。それでも室内で十分な距離を取って、敵の陣地に狙いを定める。


 そして、対戦車ロケット弾が放たれる。


 対戦車ロケット弾は狙いを陣地の向こうのコンクリートの壁に向けており、信管は問題なく作動した。爆発が生じ、陣地が吹き飛ばされる。


「行け、行け、行け!」


「突撃!」


 魔導式機関銃が制圧射撃を行い、敵を牽制した状態で陣地に向けて『ツェット』の隊員が駆け抜ける。そして、陣地は無事制圧された。陣地の向こうには下に降りる階段があり、その敵には金属製の扉が見える。


「ビンゴ。弾薬庫だ」


「目標のひとつは達成できそうね」


 弾薬庫の扉を吹き飛ばすためにブリーチングチャージを仕掛ける。


 万が一、ブリーチングチャージの爆発が弾薬庫に到達することを想定して全員が遮蔽物に隠れ、ブリーチングチャージが点火される。


 扉が吹き飛び、弾薬庫の中が露になる。


「畜生。クソッタレめ。ついてねえ」


 弾薬庫の中にはひとりの男が立て籠もっていた。


「おやおや。外国人傭兵ってあんただろ。当たりだったな」


「ああ。そうだよ、畜生。やっぱり負けそうな側につくもんじゃないな」


 傭兵の男が魔導式拳銃を構える。


 マーヴェリックたちが一斉に男に銃口を向ける。


「俺は何も喋らねえし、拷問も、バラバラ死体もごめんだ。くたばりやがれ、クソ野郎ども。地獄で会おうぜ」


「クソ! 全員退避! 退避! 安全な場所まで逃げろ!」


 マーヴェリックが叫び、一斉に『ツェット』の兵士たちが離脱する。


 その直後に弾薬庫が大爆発を起こした。


 迫撃砲弾から何までが爆発し、きのこ雲が立ち上る。


「畜生。無茶苦茶やりやがる。どうかしてるぞ」


「同感。けど、目的は一応果たした」


「ああ。弾薬庫の爆破はな。傭兵を生かして捕まえるのは無理だった。どうにも残念なことに。だが、連中もそろそろ尻尾を出してきたな。連中の本体をとっ捕まえるのも、そこまで時間はかからないかもしれないぞ」


「だといいけど」


 爆発が起きて吹き飛んだ基地に脱出のための輸送ヘリが降下してくる。


 負傷者から優先的にヘリに乗せられ、1機ずつヘリが飛び出っていく。


 マーヴェリックは最後の輸送ヘリに乗った。


「忘れ物はないな? 誰も残して帰らない。何も残して帰らないだ。少しの物証でも麻薬取締局が追いかけてくるには十分だ」


「大丈夫です」


「なら、帰るとするか」


 輸送ヘリは離陸していき、マーヴェリックたちは基地を去った。


……………………

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